日本初、胆道癌の分子標的薬の開発に着手 他施設共同の第1相試験が開始
2014年6月6日、独立行政法人国立がん研究センター(東京都中央区、略称:国がん)は、胆道癌において国内初となる「分子標的薬の開発に向けた多施設共同の臨床研究を開始した」と発表した。これは、2013年11月に米国科学雑誌「Hepatology」にて公表された「胆道がんに分類される肝内胆管がんの治療標的となる新たながん遺伝子を発見、さらに細胞株を用いた実験でその遺伝子の働きを阻害する薬剤も特定することに成功した」という研究成果によるもの。ここで有効性が認められた薬剤はBGJ398 、PD173074の2剤であった。
2014年4月現在、すでに国立がんセンター中央病院(東京都中央区)および東病院(千葉県柏市)で第1相試験が開始されており、今後順次関東26施設からさらに全国の施設でも開始する予定であるという。
胆道癌とはそもそも、日本人での罹患率が比較的高い疾患であり(年間およそ2万人)、死亡率も高く(年間およそ1.8万人)日本人の癌死の原因としては肺、胃、大腸、肝、膵、に次いで6位であるとされている。発症原因は未だ明確にはなっていないが、2012 年に大阪市のオフセット校正印刷会社の元従業員が高頻度で胆管がんを発症していた事実が明らかとなり、その後の調査でインクの洗浄剤の一つが胆道がんの原因になったのではないかと考えらえている。5年生存率も悪く、膵臓癌に次いでワースト2位であるというデータもある。その背景には、早期発見が困難であることと、有効な治療法が少ないことが挙げられる。例えば、乳癌であれば適応となる薬剤は30種類にも及ぶが、胆道癌では未だ6種類しかない。有効な治療薬の開発が望まれている癌であるといえる。
今回の国がんによニュースリリースでは「胆道癌の中でも肝内胆管癌は15-30%を占め、そのうちのおよそ14%にFGFR2融合遺伝子を持つことが分かっている。今後の多施設共同研究により、FGFR2融合遺伝子が肝内胆管癌以外の胆道癌でも見られるのか、FGFR2融合遺伝子を持つ患者の特徴が何かなどを明らかにし、すでに始まっている第1相試験の結果と合せて、胆道癌初の分子標的薬の開発を進める」としている。
(Medister 2014年6月9日 葛西みゆき)
臨床・病理 胆道癌取扱い規約(第6版)