日本(JCOG)と欧州(EORTC)の国際共同臨床研究 DREAM study 開始
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、2016年度より日本医療研究開発機構(AMED)の「国際共同臨床研究実施推進事業」の拠点の1つとして選定され、国際共同臨床研究に積極的に取り組んでいる。またその一環として、がんの多施設共同臨床研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い、JCOGとして2012年からは米国のNorth Central Cancer Treatment Group / Cancer and Leukemia Group B(NCCTG/CALGB)と、2008年からは韓国胃がん学会と共同研究を実施してきた。
この程、欧州でのがんの多施設共同臨床研究を主導するEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)と共同で、大腸がんの肝転移病変に対する画像診断の国際共同研究「DREAM study」を開始した。DREAM studyはCTおよびMRI(DW-MRI、T1/T2強調MRI、造影MRI)により切除不能(unresectable)または境界型切除不能(borderline resectable)大腸がん肝転移と診断された患者が対象となる。まず化学療法を実施するが、登録時点で化学療法の開始/継続が必要か、あるいは既に終了しているかどうかで、2通りの登録方法がある。一次登録時点で大腸がん肝転移に対する化学療法の開始/継続が必要な場合は、登録後に化学療法が開始/継続される。CT、MRIの診断の情報を元に、Multidisciplinary team(MDT)で外科的切除可能と判断されると、二次登録適格例となる。登録時点で既に化学療法が終了していて、外科的切除可能と判断された患者は、一次登録と二次登録が同時に実施される。
次に外科的手術を受けた全患者の中から、CTとMRI(DW-MRI、T1/T2強調MRI、造影MRI)の全ての画像で消失が確認されたcDLM(confirmed disappearing liver metastases)の情報を収集する。cDLMが外科的に切除された場合は病理学的な遺残腫瘍細胞の有無を評価し、cDLMが外科的に切除されず経過観察となった場合は術後の再発の有無を画像検査で評価する。術前にcDLMと診断された病変の中で、病理学的に遺残腫瘍細胞のない病変あるいは術後2年間再発のない病変の割合をprimary endpointとして評価する。
DREAM studyの臨床データはVista TrialsというWeb患者登録システムを通じて全てEORTCデータセンターに集められる。JCOGデータセンターは日本の各参加施設の倫理審査委員会の承認状況の把握と、データ入力についての督促、DREAM studyに関する質問の対応などの調整業務を行い、その結果を定期的にEORTCデータセンターに報告する。
EORTCとJCOGは、DREAM studyの他にも新たな国際共同研究を計画しているという。また、臨床研究の実施にとどまらず、research fellowなどの人材交流も行うことで、相互理解と連携を深めていく方針である。2017年12月にはEORTCの研究者を招待し、JCOG-EORTC国際臨床研究シンポジウムも実施する予定である。こうした活動を通じ、国立がん研究センターとJCOGは日本におけるがん臨床研究の国際展開を積極的に進め、日本発の新規治療法開発の更なる推進に今まで以上に中心的な役割を果たしていくことになるであろう。
(Medister 2017年2月20日 中立元樹)