末期癌患者、痛み軽減なるか
2013年6月21日。福岡大学の高野行夫教授らは末期癌の痛みの原因を発見したと英国科学誌電子版(Cell Death Dis. 2013 Jun 20;4)に発表した。末期癌での痛みは神経が傷つくことで起こる神経障害性疼痛と呼ばれるもので、痛みの原因は脊髄で「CCL-1」というたんぱく質が増えることが原因だという。
末期癌での疼痛では従来、モルヒネなどの痛み止め薬が効かないため末期癌患者は苦しむというのが一般の人への印象でも強いのではないだろうか。今回、「CCL-1」に注目されたことで痛み止めとして働く薬の開発にも繋がるのではないかと期待している。
高野教授らはマウスを用い動物実験を行った。脊髄内にCCL-1を注射すると少しの刺激でも激痛を感じた動きを見せており、逆にCCL-1を抑制する物質を注射しておくと激痛は感じなくなるという予防効果も結果として得ている。
今回の発見が臨床の現場で役にたつのはいつになるのだろうか。現在、日本人の死因第一位は悪性腫瘍である。癌でなくなるということは珍しいことではなくなってきているのだ。末期になると患者を取り巻く環境は劣悪となる。家族は抗がん剤の副作用や疼痛に苦しむ患者の姿、日々衰弱していく患者の姿を見届けなければならない。モルヒネを用い意識朦朧としたなか最期を迎えるということはQOLの低下であるだろう。癌患者のQOL向上のためにも早期に患者さんに処方できるような薬が開発されることを祈る。
(Medister 2013年 6月 25日 桐生賢汰)
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