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歯科治療で使うチタンの過酸化水素水熱処理による活性化

チタン表面のタンパク質吸着率は、化学的な処理や、構造、形態、生物学的な経年変化により変化することが知られており、歯列矯正のアンカーとして使われるミニインプラントを、滑らかなチタン表面にすることが望ましい。

そこで、日本歯科大学の佐藤田鶴子教授らのグループは、インプラント治療における経年したチタンの表面修飾が、過酸化水素水熱処理により、生物学的に活性化することを見出し、歯科医学誌「Dent Mater J.」に報告(2013;32(1):115-21.)した。

佐藤田鶴子教授らは、チタン合金Ti-6Al-4Vの表面に3%過酸化水素水で処理し、オートクレーブ(autoclave:加熱滅菌)により加熱し、テストサンプルとした。電子顕微鏡で表面を観察したところ、処理された表面に、酸化チタンのナノ多孔質のネットワーク(濾過機能による物質分離や、大きな表面積を生かした触媒・吸着作用が有用)が観察された。これは、未処理の表面よりも高い親水性、タンパク質吸着性、細胞増殖能が観察され、高い生物学的機能活性が得られるものと評価された。

著者の一人である日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座松野 智宣准教授は編集部の取材に対し、実際に歯科診療所で手軽に試用したい先生方に対し、本法は矯正用インプラントあるいは暫間的インプラントへの応用するものであり、通常のデンタルインプラントには応用しないように注意喚起している。この処理により、インプラントのチタン表面が黒褐色に変色するが、これが酸化チタン膜なので安心して良いという。また、本処理後は過酸化水素水がチタン表面に付着しているので、埋入前に滅菌した精製水か生理食塩水で十分に洗い流すように注意している。なお、本処理後は可及的に速やかに埋入することが望ましいと述べた。このように、矯正用インプラントや暫間的インプラントを使用する診療所においては非常に有効な手段になりそうだ。今後の研究については「より骨との結合を高めるため、現在ある成長因子を表面処理後に塗布した研究を行っている。細胞培養実験のみならず動物の骨にも埋入し、抜去トルクなどを検討している。」と展望を述べた。一般の歯科診療所などでも利用できる機材で、チタン合金の表面を活性化出来る方法として、利用しやすい技術となりそうだ。(Medister 2013年4月11日)

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