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段階的ケア減量介入により、低コストに痩せられる

肥満は先進国を中心に、多くの国で課題となっており、生活習慣病対策としても、効率のよい減量治療が求められている。段階的方法は、マイルストーンの完了に基づいた介入を個人ごとにカスタマイズし、従来の治療アプローチよりも、管理にコストがかからないより効果的な方法になり得ると考えられている。標準的行動減量介入(SBWI)では、18ヶ月の減量期間の内、最初の6ヶ月間毎週カウンセリングをし、次の6ヶ月間は月に2回のカウンセリング、最期の6ヶ月は月に1回のカウンセリングを行う。段階的ケア減量介入(STEP)は、内容はSBWIと同様だが、接触回数・接触タイプ、減量戦略を3ヶ月間の減量到達度に応じて修正するという方法だ。

デューク-NUS大学院医学部(シンガポール)のEric A. Finkelstein氏らは、SBWIと比較してSTEPは大きな重量減少につながるかどうかを検証し、その結果を医学誌「JAMA.」に報告(2012;307(24):2617-2626.)した。

Eric A. Finkelstein氏らは、米国の2大学(ピッツバーグ大学とノースカロライナ大学)にて、肥満の成人(BMI=25~40、18歳から55歳、非白人33%、女性83%)に対し、ランダム化臨床試験を行い、SBWI (n = 165) もしくは STEP (n = 198)を割りつけた。2008年5月から2010年2月までに登録され、データ収集は2011年9月までに完了した。18ヶ月間、全ての参加者に低カロリー食が与えられ、規定の身体活動をし、グループカウンセリングに出席した。18ヶ月の体重変化、安静時の心拍数や血圧、腹囲、身体組成、体力、身体活動、食事摂取量、およびプログラムの費用が調査結果として検討された。

363人の参加者のうち、260人(71.6%)が18ヶ月間の体重変化の指標を提供した。18ヶ月の介入の結果、SBWI群では93.1 kg (95% CI, 91.0 ~ 95.2 kg)から85.6 kg (95% CI, 83.4 ~ 87.7 kg) に減量し(P < .001)、STEP群では92.7 kg (95% CI, 90.8 ~ 94.6 kg) から86.4 kg (95% CI, 84.5 ~ 88.4 kg)に減量した (P < .001)。よって、SBWI群では8.1%の体重減、STEP群では6.9%の体重減であったが、減量における有意差はなかった。一方で、参加者あたりの平均コストは、SBWI群1357ドルに対し、STEP群785ドルだった。費用にはスタッフの人件費に加え、事務用品費、通信費、STEP群の食事交換コスト、歩数計などの全ての非労務費を含む。なお、両群とも有意で、比較可能な、安静児心拍と血圧の改善、身体活動の改善がみられた。 以上より、Eric A. Finkelstein氏らは、「肥満の成人では、SBWIの使用により、18ヶ月でSTEPよりも大きな減量に成功した。SBWIと比較して、STEPは臨床的に意味のある体重減少をより少ないコストで提供された。」と結論付けた。日本ではコストと効果の検証はあまり活発ではないが、効果は同レベルであればコストのかからない選択を推奨するために、本研究の考え方は参考になるかもしれない。(Medister 2012年6月28日)