医療NEWS

治験業務における効率的かつ信頼性の高いリモートSDVシステム導入

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)東病院は、治験業務において効率的かつ信頼性の高いリモートSDV (Source Data Verification)システムを、日本マイクロソフト株式会社(以下:日本マイクロソフト)と富士通株式会社の技術支援によりマイクロソフトのパブリッククラウドサービスを基盤にシステムを構築し、治験依頼者である製薬企業のSDVに対して当該システムの導入を開始することとなった。

治験依頼者は、収集した被験者に関するデータをまとめた症例報告書医療機関における記録との整合性の検証作業を行い、データが正確であることを確認するSDVを行っている。SDVは、原資料の持ち出しが禁じられているため、従来は医療機関内でSDVを行う必要があり、医療機関内にSDV専用室の設置・管理などを行う体制整備が必要であった。東病院では年間100を超える治験を請け負っており、14室のSDV専用室は、常に治験依頼者により埋まっている状態であった。一方、治験依頼者においては、医療機関へ訪問するための交通費や宿泊費などのコスト、日中の限られた時間帯での作業による時間調整の負担などがかかるため、SDVの効率的運用が求められてきた。

遠隔でSDVを行えるリモートSDVは、治験実施医療機関に赴き直接原資料を閲覧するSDVと比較して、専用の閲覧スペースの不要化やモニタリングの効率化、費用の削減などのメリットがある一方、閲覧資料が本当に原資料であるかどうかの真正性確保やアクセス・セキュリティ確保などが問題として挙げられる。そこで今回、真正性やセキュリティに配慮し、院内の原資料を遠隔閲覧できるリモートSDVシステムを構築した。

今回開発されたリモートSDVシステムと治験原データ管理システムを連携することにより、真正性が確保された原資料を外部から直接閲覧することが可能であり、医療機関を訪問して閲覧できるSDVと同じデータが表示されるという。また、リアルタイムに原資料が治験原データ管理システムに反映されるため、閲覧内容に時差が生じることもない。開発はコストや事業継続性を意識して、日本マイクロソフトが提供するパブリッククラウドサービス上に、治験原データ管理システムにアクセスし原資料を閲覧するためのリモートSDVシステムを構築した。パブリッククラウドを利用することで、サーバー設置に係る費用を大幅に削減できるとともに、スペックをフレキシブルに変更できることで、利用者の増減に際し問題なく対応可能となった。

本リモートSDVシステムを機に、東病院における病院情報システムはグローバルスタンダードを見据え、今後は、CDISC標準などの海外標準の採用も視野に入れたシステム開発を行い、治験に係る必須書類についてドキュメントの電子化についても、検討して行く予定だという。

(Medister 2017年4月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 治験業務における効率的かつ信頼性の高いリモートSDVシステム導入 パブリッククラウドを活用し、グローバル化対応により医薬品開発を促進