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熱帯地方の2009インフルエンザ・パンデミックの影響

2009年のインフルエンザのパンデミックでは、ECDC (European Centre for Disease Prevention and Control)の発表(2009年11月29日時点)では、世界で120万人の感染者を出し、1万人弱の死亡数が記録されている。熱帯地方のブラジルでは、5万人弱の感染者数に対し1500人超の死亡数が記録された。世界の熱帯地方には人口の半分が属し、多くの伝染病が負担となっているが、インフルエンザのパンデミックの影響についてはあまり知られていない。

そこで、Origem Scientifica(ブラジル)のAlonso WJ.氏らのグループは、南半球を中心(+5(°)N to -35(°)S)とする熱帯および亜熱帯地方に属するブラジルのインフルエンザのパンデミックによる影響を検討し、学術誌「PLoS One」に報告(2012;7(8):e41918. Epub 2012 Aug 1.)した。

Alonso WJ.氏らは、研究室で確認された死亡例と、プレパンデミックレベルを超えてからの人口動態統計(死亡率)を分析した。その結果、パンデミックの期間中、25歳から65歳の成人において、肺炎、インフルエンザ、呼吸器疾患の死亡率が有意に高かった。肺炎/インフルエンザ、ならびに呼吸器疾患による死亡率は、パンデミック前の平均死亡率に対し、それぞれ5.2%、2.7%高い結果となった。死亡率は、社会人口学的指標とは相関せず、収入とは反比例した。興味深いのは、パンデミック期ではないときは確認できないのに対し、パンデミック期には赤道に近づくほど死亡率が低下するデータが得られたことだ。さらにパンデミックに関連した死亡例の時期も赤道付近で遅れて現れた。

以上よりAlonso WJ.氏らは、「南半球の熱帯地域ではパンデミックによる影響が軽減される可能性があり、気候と関連している可能性が示唆され、パンデミックの伝達率や重症度の免疫学的、社会経済的、環境ドライバの役割評価とパンデミックによる負担の広範な推定をする上で、地域性が直接影響するという知見が得られた。」と述べている。我が国でもインフルエンザシーズンには湿度を高めるなどの対策が講じられたが、環境の調整による予防効果を考える上でも示唆のある結果である。(Medister 2012年8月8日)

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