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特発性肺動脈性肺高血圧症の子供の全身性の内皮機能障害は、疾患の重症度と相関する

特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)は進行性の肺血管のリモデリング、肺血流障害と右心不全による危険性の高い疾患だ。我が国では公費対象の難病の一つであり、「呼吸不全に関する調査研究班」による調査(2009年)では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者数は1,272名とされ、毎年100人前後の患者増がみられている。

最近の研究では、肺高血圧症を有する成人では、全身性の内皮機能不全を示しているが、成人では血管内皮機能に影響を与える併存疾患を持っていることが多い。一方で、全身性の内皮機能は、IPAHの子供では検討されてなかった。そこで、ニューアークベスイスラエルメディカルセンターのWood JC氏らは、IPAHが進行性の血管障害であり、肺と全身の両方の血管床に影響を与え、その全身の内皮機能不全は疾患の重症度と相関していると仮定して、FMD計測により子どものIPAH患者の全身性の血管内皮障害との関連性を検討し、医学誌「J Heart Lung Transplant.」に報告(2012 Jun;31(6):642-7.)した。

6歳から20歳の、13例のIPAH患者と同数のコントロールで検討した。FMDにより血管内皮機能を計測したところ、IPAH群でコントロール群と比べ有意にFMD値が低い(IPAH群:コントロール群=5.1 ± 2.1% : 9.7 ± 2.0%; p < 0.0001)ことが示された。IPAH患者では、三尖弁逆流速度と右心室の心筋性能指数に反比例して、心係数と直接相関した。つまり、IPAHの重症度と、全身性の内皮機能障害に関連性が示された。 以上よりWood JC氏らは、今後の展望として、「全身及び肺の内皮機能不全の共通メカニズムの解明により、IPAHの治療法の開発に貢献できるかもしれない。」と述べている。(Medister 2012年8月24日) 肺高血圧症診療マニュアル―根治を目指す最新の治療指針
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