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特発性肺線維症の3剤併用療法は死亡数・入院数を増加させる

特発性肺線維症(IPF)は世界で12万人以上と推定され、診断後の平均生存期間は4〜6年とみられる。IPFの治療薬として、プレドニゾン、アザチオプリン、およびN-アセチルシステイン(NAC)の3剤が単剤もしくは併用として使われている。プレドニゾンは免疫抑制効果のある副腎皮質ホルモンの合成薬であり、アザチオプリンも免疫抑制薬として知られる。NACはアミノ酸の一種であり、痰を切れやすくする鎮咳剤として臨床で用いられることもある。この3剤レジメンの併用における安全性、有効性は不明だった。

特発性肺線維症臨床研究ネットワークは、米国ワシントン大学、デューク大学臨床研究所、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、チューレーン大学、ミシガン大学の共同研究体で、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、軽度から中等度の肺機能障害を持っていた35歳から85歳までのIPF患者で、プレドニゾン、アザチオプリン、およびNACの3剤併用療法、NAC単剤、またはプラセボの3つのグループに1:1:1で割り当てた試験を行い、医学誌(N Engl J Med)に掲載(2012; 366:1968-1977)された。

研究チームでは、データの約半数(77人の3剤併用療法群と78人のプラセボ群の患者)が集計された段階で中間解析をしたところ、3剤併用療法群はプラセボ群と比べて死亡率(8:1)、入院率(23:7)が増加していた。3剤併用療法の生理学的、臨床における有用性がないことも加味し、中央フォローアップ期間32週で安全性モニタリング委員会は3剤併用療法群の終了を推奨した。よって、3剤併用療法はプラセボよりも死亡数と入院数を増加させることが示された。

なお、研究チームは論文において、「必ずしもNHLBIや国立衛生研究所の公式見解を表すものではない。」と注意を促している。(Medisterニュース 2012年5月28日)