男性の内皮機能とテストステロン濃度の関連(中部ヨーロッパの集団ベース研究)
加齢男性において、テストステロン減少は、心血管疾患をはじめとして、抑うつ状態、性機能低下、骨粗鬆症、メタボリック症候群のリスクファクターになる。
エルンスト•モーリッツ•アルント大学のFelix SB氏らは、ポメラニア地方の人々に対し、血清テストステロンレベルと内皮機能の間の関連性をflow-mediated dilation (FMD) 検査ならびにnitroglycerin-mediated dilation (NMD)検査を指標として集団ベース研究を行い、医学誌「Arterioscler Thromb Vasc Biol.」に報告(2012 Feb;32(2):481-6.)した。
FMD検査では、血管内皮機能を評価しているが、血管内皮機能が正常でも血管の平滑筋機能が阻害されると、血管の拡張は低下し、FMD値は低下して検出される。そこで、血管平滑筋機能を評価するために、血管拡張剤であるニトログリセリン錠を舌下投与し、安静時の血管径と投薬後の血管径血管径変化を拡張率としたNMD値が使われる。
Felix SB氏らは、25歳から85歳の722人の男性に対し、試験を行った。血清総テストステロンおよび性ホルモン結合グロブリン(SHBG)濃度を化学発光免疫測定法により測定し、フリーテストステロンは質量作用の法則に基づき算出して、これらとFMD値ならびにNMD値の関連性を多変量ロジスティック回帰分析により検証した。その結果、血清総テストステロンならびにフリーテストステロンの減少はFMD値の減少と相関し、SHBGはFMD値と相関しなかった。また、テストステロンならびにSHBGの値はNMD値の減少と相関しないことが示された。
すなわち、男性のテストステロンの減少は、血管内皮機能と関連し、血管平滑筋機能とは関連性が見いだせないということを示唆しており、今後、男性更年期の検査や研究にもFMD検査が検討される可能性がある。(Medisterニュース 2012年2月29日)