癌による疼痛緩和に朗報 持続性癌疼痛治療剤が国内での製造販売承認取得
2014年3月24日、ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は、持続性癌疼痛治療剤「タペンタ®錠(一般名:タペンタドール塩酸塩)」の25㎎、50㎎、100㎎の日本国内における製造販売承認を取得したと発表した。タペンタドール塩酸塩は、2008年11月20日にはすでにアメリカFDAにおいて承認がなされているものであり、2013年11月までにはすべてのEU加盟国および北米(カナダ、アメリカ)をはじめとする37の国と地域において承認されている薬剤である。ヤンセンファーマは、2013年5月14日付で厚生労働省へ承認申請を行っていたが、およそ10か月を経て承認されたことになる。
タペンタドール塩酸塩は、主に脳や脊髄、消化管等においてオピオイド受容体を活性化することにより、脳や全身への効果を発現する。さらに脳内におけるノルエピネフリンの再取り込みを阻害することで、長い鎮痛効果が得られると考えられている。考えられる副作用としては、嘔気、眩暈、眠気、頭痛などがある。アルコールと関連した抑うつ効果を現すリスクや、他のオピオイド系薬剤との併用などによる呼吸抑制のリスクが予測される。
一般的にオピオイド系の薬剤には、長期服用による依存性や乱用性を引き起こす可能性も指摘されている。従って、タペンタドール塩酸塩にも同様の懸念があり、患者の状態によっては使用を中止・中断するタイミングを計る必要もある。
日本では2012年現在でおよそ36万人が癌で死亡しているとされ、全死亡者数のおよそ1/3を占めている。この状況の中、癌による疼痛は早期癌患者で3人に1人、進行癌患者においては3人に2人が感じているというデータもあり、癌患者のおよそ8割は疼痛によるQOLの低下を招いているともいわれている。しかし日本における癌疼痛緩和効果のある経口オピオイド系薬剤は、諸外国と比較しても種類が少ない状況にあった。今回のタペンタ®錠の承認により、疼痛に苦しむ癌患者に対する緩和ケアへの新しい道筋が開けたと言えるだろう。
(Medister 2014年4月1日 葛西みゆき)