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癌転移に新たなタンパク質発見

癌治療においての治療薬開発や完治の可能性がでてきた事は本コンテンツ内でここ何度か紹介してきたので大多数の方に周知されてきているのではないかと思っている。それらの記事を読み直していただくと分かるのだが全てにおいて共通していることは癌細胞の増殖抑制こそが最良の癌の治療法だということだ。そこで以前も紹介した癌転移にVEGF(血管内皮細胞増殖因子)が関与するという研究結果に関して追加の研究結果が出たので紹介しようと思う。

癌転移の際にVEGFが新たな血管を動員し、癌細胞はその血管を利用し転移するといった現在の癌研究においての最もポピュラーなものを紹介したが、今回はその転移の際にある顆粒が分泌されているというものだ。顆粒はエクソソームと呼ばれており、この中にはmRNA,miRNAなど様々なタンパク質が含まれているということが分かったのだ。
エクソソームについて研究をしたのは米国Washington University のJoshua L. Hoodらの研究グループである。

彼らは癌細胞由来のエクソソームを注射したマウスと人工的なエクソソームを注射したマウスを用意しどちらのほうがより転移するかを調べたのだ。結果は癌細胞由来のエクソソームを注射したマウスのほうが人工的に注射したマウスよりも遥かに転移することが分かり、なおかつエクソソームは癌転移前に転移先の環境を癌が住みやすく汚染していたのだ。

しかし、この研究ではあることが分からなかった。一つ目に癌細胞由来エクソソームはどのような細胞に働きかけるのか。二つ目に作用する際に分子レベルで何が起きているのかである。

答えの一端は米国Weill Cornell Medical College のHector Peinadoらによって解明された。彼らはメラノーマ患者の予後と血清エクソソーム値を調べデータをもとにマウスでの実験を試みたのだ。今回の研究で分かったことは癌細胞由来エクソソームは骨髄細胞に作用し、エクソソームに含まれるMETを介して分子レベル反応が起きているというものだ。
今回の結果をみて分かるように誰かが研究した内容の不明瞭部分を明らかにするということも研究職の方々は実践しており、それが臨床の現場で役に立って来るのだ。また今日も世界のどこかでは新たな研究がされているだろう。全ての癌が完治出来る日が来るのはそう遠くないのかもしれない。(Medister 桐生賢汰 2013. 05.14 )
がん骨転移治療―ビスホスホネート治療によるBone Management
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