皮膚がんの原因遺伝子を特定 血管肉腫治療の新たな一歩となるか
2015年11月2日、熊本大学は、「皮膚がんの原因遺伝子を特定した」と公表した。この研究は、熊本大学ならびに北里大学の研究グループによるもので、遺伝子の異常な融合が皮膚ガンの発生に関わることを発見したという。皮膚がんの中でも、見逃されやすい上に進行が早く、治療が難しいとされる「血管肉腫」の発生に対し、特殊な融合遺伝子が関わっていることを確認したことになる。この研究成果は、アメリカの医学誌「キャンサー・リサーチ」にて発表、1日付で掲載されている。研究グループによると、皮膚がんの原因解明や特効薬の開発につながる可能性があるという。
そもそも血管肉腫とは、血管などの細胞から発生し、中年以上の頭部にできることが多い。一見すると「できもの」に見えないことが多く、見逃されることが多い。それにも関わらず、進行がとても早く、リンパ節や内臓への転移が多い。治療法としては、放射線療法、化学療法、手術療法が一般的だが、血管肉腫に対してはこれらの治療が奏功することが少なく、根治が難しく、予後の悪いがんの一つである。後発年齢が中高年であることから、特に高齢化社会となっている日本では、新しい診断法や治療法の開発の必要性が高まっている。
研究グループはまず、血管肉腫のがん細胞の遺伝子を解読。本来は別々に存在する二つの遺伝子が、融合していることを発見、血管肉腫の患者25人中9人で確認された。
さらにこの融合遺伝子を含む細胞をマウスの皮膚に注射すると、がん化が確認された。逆に融合遺伝子を細胞から除去すると、血管肉腫の細胞が減少した。これらのことから、融合遺伝子が血管肉腫の発生に関係していることが明らかになったという。
融合遺伝子はこれまで、肺がん、白血病、悪性リンパ腫などでも確認され、治療に生かされているものもある。研究グループは「皮膚ガンの原因の解明のみならず近い将来簡単な診断、進行の速さの予測、そして特効薬の開発にも役立つ可能性がある」と期待している。
(Medister 2015年11月6日 葛西みゆき)
<参考資料>
熊本大学 皮膚ガンの原因遺伝子を特定!-遺伝子の異常な融合が皮膚ガンの発生に関わる-
皮膚がん 2015年 09 月号 [雑誌]: がんサポート 別冊