空腹時血糖値が高い人は膵臓癌に十分ご注意を!
台湾で行われた研究により、空腹時血糖が高い人ほど膵臓癌のリスクが高くなることが分かった。2015年1月2日付のイギリスの医師会雑誌BMJのオンライン版で公開されている。
これまで行われてきた研究でも、2型糖尿病は膵臓癌の危険因子であることが指摘されてきた。そこで今回の研究ではメタ解析を行い、血糖値と膵臓癌リスクとの量依存的な関係性について分析を行った。メタ解析の対象となったのは、9件の研究、計2,408例の膵臓癌患者のデータであった。その結果、空腹時の血糖値がおよそ10㎎/dL上昇するにつれて、膵臓癌になるリスクが14%高くなることが分かった。
2型糖尿病となり空腹時血糖値が高い状態が続くということは、常に血液中のブドウ糖が多いことになる。一方の癌細胞には、正常細胞よりもブドウ糖を3~8倍多く取りこむという特徴がある。この特徴を生かした検査方法もあるくらいだ。研究者は「膵臓癌細胞はブドウ糖をより多く摂りこむことで成長するため、このような結果になったのではないか」と述べている。
膵臓癌とはそもそも特徴的な症状が少なく、健康診断などで発見されることは非常に稀であり、膵臓癌と分かった時にはすでに進行していることが多い。5年生存率が非常に低く、この論文によると5%未満とされている。日本における統計でも、膵臓癌を発症した人数と膵臓癌による死亡者数はほぼ同等といわれている。日本の「最新がん統計」データによると、2010年に膵臓癌を発症したのは32,330人だが、2013年の死亡者数では30,672人となっており、年間およそ3万人が罹患し、ほぼ同等の人数が死亡していることが分かる。
世界全体で見ても、年間およそ23万人が膵臓癌で死亡しているが、ここ数年膵臓癌の発症率と死亡率は比例する形で増加傾向にある。英米ではそれぞれ癌による死亡の5位と4位を占めており、日本でも男性5位、女性5位となっているが、世界的に糖尿病患者が増えていることを併せて考えると、膵臓癌による死亡は今後も増加することが予測される。
(Medister 2015年1月28日 葛西みゆき)
<参考文献>
科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2013年版: 構造化抄録CD-ROM付