経口避妊薬による血栓性脳卒中と心筋梗塞のリスク
経口避妊薬(低容量ピル)は、世界中で普及し、アジアだけでも4600万人の利用者がいる(2007年国連調べ)。避妊以外にも生理周期の調整や月経困難症の緩和、子宮内膜症の治療などにも活用されている。一方で、肝機能障害、血栓症、発がん性などの副作用も知られる。
経口避妊薬の副作用に対する見解において、静脈血栓塞栓症、脳卒中、心筋梗塞などのリスク評価に対し、評価の見解が別れる矛盾が見られていた。そこで、コペンハーゲン大学(デンマーク)のNiels Keiding氏らのグループは、15歳から49歳の心血管疾患とがんの既往歴がない妊娠してない女性に対し、15年間の歴史的コホート研究を行い、その成果を医学誌「N Engl J Med」に報告(2012; 366:2257-2266June 14, 2012)した。
1,626,158人の女性が14,251,063人/年で検証され、血栓性脳卒中が3,311人(10万人あたり21.4人)、心筋梗塞が1,725人(10万人あたり10.1人)だった。経口避妊薬を使わない場合と比べ、エチニルエストラジオール30~40 μgが含まれている経口避妊薬では、プロゲスチンの種類に応じて血栓性脳卒中と心筋梗塞の相対リスクが関連付けられた。すなわち、血栓性脳卒中:心筋梗塞の相対リスクが、ノルエチンドロンで2.2:2.3、レボノルゲストレルで1.7:2.0、ノルゲスチメートで1.5:1.3、デソゲストレルで2.2:2.1、ゲストデン1.8:1.9、ドロスピレノンで1.6:1.7という結果が得られた。エチニルエストラジオール20μgでは以下の通りだった。血栓性脳卒中:心筋梗塞が、デソゲストレルで1.5:1.6、ゲストデン1.7:1.2、ドロスピレノンで0.9:0.0となった。経皮吸収パッチでは3.2:0.0、腟内ホルモンリングでは2.5:2.1だった。
以上より、Niels Keiding氏らは「経口避妊薬に対する絶対リスクは低かったものの、エチニルエストラジオールが20μgから30~40 μgにすることにより、プロゲスチンタイプに応じてリスクが上昇する傾向がある」と指摘している。(Medisterニュース 2012年6月19日)