結腸がんの再発を予測する遺伝子検査の有用性を証明
国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)と公立大学法人横浜市立大学、ジェノミック・ヘルス社らの共同研究グループは、結腸がんを切除した後の再発の可能性(再発リスク)を予測する、遺伝子検査「オンコタイプDX大腸がん検査」の有用性を証明した。
がんを切除した後は、がん再発防止のため、抗がん剤による化学療法が選択されることがある。しかし、抗がん剤には、再発の防止には有効である反面、末梢神経障害(手足のしびれや痛みなど)等をもたらし、患者のQuality of Life(QOL; 生活の質)を損なう側面もあるため、がんの個別化治療を進めていく上でどの薬剤を用いるかが重要になる。化学療法の最適な投与方法に関する研究が世界中で進められているところだが、患者毎に再発リスクを予測できる方法があれば、事前に再発リスクの高低を知り、化学療法に用いる薬剤の種類を選択することが可能となる。
結腸がん用のオンコタイプDX大腸がん検査は、12個の遺伝子の発現量と独自のアルゴリズムに基づいて、患者毎の再発リスクを予測する遺伝子検査で、海外の研究においてその有用性が報告されてきた。今回の研究では、2000年から2005年に日本国内の12病院において手術のみを受けたステージIIとIIIの結腸がん1568人から、コホートサンプリングデザインに基づき、630人(再発210人、無再発420人)を抽出して、最終的に評価が可能な597人を対象に重み付きコックス回帰分析を行った。
分析の結果、手術後に化学療法が省略されることのあるステージIIにおいても、高リスク群では、5年再発率が19%と低くないことから化学療法を行なうべきである、また、ステージIII A/Bの低リスク群では、有効な反面、末梢神経障害をおこす薬剤を用いた化学療法は必要のない可能性がある、といったことが明らかになった。
本研究から、大腸がんの一つである結腸がんにおいて、再発リスクの予測が患者毎に可能となった。そのため今後は手術後、がんの再発防止のために行われる化学療法において、患者毎の再発リスクに応じた薬剤の選択が進むことが期待される。
(Medister 2016年6月27日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 結腸がんの再発を予測する遺伝子検査の有用性を証明