総合医を必要とするところ
複数の診療科を股がるような併存疾患に罹患する多疾病罹患は、どういった人達に多いのだろうか。この社会的傾向を理解することで、どういったところにあらゆる臨床科に広く精通したジェネラリストな総合医を配置するべきかが見えてくる。
ダンディー大学(英)のBruce Guthrie氏らは、年齢や社会経済的貧困に関連して、身体的・精神的健康障害の併存疾患の分布を横断研究し、医学誌「The Lancet」に報告(Volume 380, Issue 9836, Pages 37 – 43, 7 July 2012)した。
2007年3月の時点でスコットランドの314ヶ所の医療機関に登録されている1,751,841人のデータベースから40併存疾患でデータを抽出した。Bruce Guthrie氏らは、併存疾患の数、疾患のタイプ(物理的もしくは精神的か)、性別、年齢、社会経済的地位に応じてデータを分析した。Bruce Guthrie氏らは2つ以上の疾患が存在することを多疾病罹患として定義した。
全患者の42.2%が1つまたは複数の併存疾患を有し、23.2%が多疾病罹患だった。多疾病罹患の有病率は年齢とともに大幅に増加し、65歳以上のほとんどの人に存在していた。多疾病罹患の発症は、特に精神疾患を含む多疾病罹患率は、富裕層に比べて貧困層の地域に住む人々では10~15年早期に発生した(富裕層の有病率:貧困層の有病率=5.9%:11.2%)。精神疾患を持つ人は、身体疾患数が多いほど高く(補正オッズ比6.74)、貧困層のなかでも、最貧層に多かった。
以上の結果より、Bruce Guthrie氏らは「貧困層の多い地域ほど、ジェネラリストな総合医を必要している」と結論づけている。(Medister 2012年7月10日)