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肺癌のリスクと予後を予測 理研が新たなバイオマーカーを発見

 肺癌のリスクと予後をどこまで解明できるのか。理研は「肺がんのリスクと予後を予測する新規バイオマーカーを発見した」と、米国のオンライン科学雑誌『PLOS ONE』(9月11日付け:日本時間9月12日)で発表した。

日本における肺癌は、高齢になるほど罹患率が増加し、日本における全がん死のうちおよそ19.7%が肺癌である。また5年相対生存率も比較的悪く、2011年の癌による死亡者数では、第1位となっている。肺癌は小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大別され、小細胞肺がん・非小細胞肺がんに属する扁平上皮がんは、喫煙との関係が大きいとされているが、肺腺癌は非喫煙者の女性にも発生することが分かっている。しかしその原因は明らかにされていない。

かねてより、転写因子であるNRF2が、異物や酸化ストレスに対する感受性の亢進、炎症や免疫系の異常、がん細胞の増殖、抗がん剤への抵抗性などに関連していることが知られていた。そこで今回、理研の石川智久上級研究員、横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立がんセンターらの共同研究グループは、387人の肺がん患者の血液試料からゲノムDNAを抽出し、遺伝子多型解析を行った。

その結果、一塩基多型(以下SNP)の出現頻度は男女で差があり、SNPホモ接合体(-617A/A)を持つ女性の肺癌患者の比率は男性の約4倍、特に非喫煙者の肺腺癌患者(140人)ではSNPホモ接合体(-617A/A)を持つ患者は16人、その全員が女性だった。さらに、この女性非喫煙者の癌組織において、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異が頻繁に見られることも判明した。
さらにSNPホモ接合体(-617A/A)を持つ肺癌患者は外科手術後の5年生存率が良好である一方、SNPホモ接合体(-617A/A)を持つ女性非喫煙者では肺腺癌になるリスクが男性非喫煙者よりも高いことも分った。

これらの結果から、NRF2遺伝子のSNP(-617C>A)は、肺癌の予後と非喫煙女性の肺腺癌リスクの予測に有用なバイオマーカーであると考えられ、今回の成果は、肺癌患者の個別化医療における新しいアプローチとなると考えられている。
(Medister 2013年9月24日 葛西みゆき)

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