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血糖調節異常患者におけるn-3系脂肪酸の効果

α-リノレン酸(18:3, ω-3; ALA)、エイコサペンタエン酸(20:5, ω-3; EPA)及び、ドコサヘキサエン酸(22:6, ω-3; DHA)はn-3系脂肪酸と呼ばれ、ヒトにとっては「日本人の食事摂取基準(2005年版)」で成人では1日に2.0-2.9グラム以上が必要とされる必須脂肪酸である。n-3系脂肪酸により、心筋梗塞または心不全患者の心血管イベントを防ぐことが報告されているが、2型糖尿病患者におけるそれらの効果は不明であった。

マクマスター大学(カナダ)のYusuf S氏らのグループは、血糖調節異常の患者におけるn-3系脂肪酸の効果について、2×2要因型の二重盲検試験により検証し、医学誌「N Engl J Med」に報告(2012; 367:309-318)した。心血管イベントリスクが高く、空腹時血糖、耐糖能異常、n-3系脂肪酸のエチルエステル900mg以上もしくはプラセボを毎日服用し、インスリングラルギンまたは標準治療を受けている糖尿病患者12,536人が試験に参加した。Yusuf S氏らのグループは、n-3系脂肪酸とプラセボの効果を心血管系に起因する死亡数を主要転帰として比較評価をした。

その結果、平均6.2年のフォローアップ期間で、n-3系脂肪酸とプラセボの間で心血管系に起因する死亡数に重大な減少はみられなかった。また、主要な血管イベントの発生率、あらゆる原因による死亡数、不整脈による死亡数にも減少はみられなかった。トリグリセリドレベルは、他の脂質レベルを変化させることなく、14.5 mg/dlほどn-3系脂肪酸を投与された患者で減少がみられた。副作用は同等という結果になった。以上より、n-3系脂肪酸は血糖調節異常患者において、心血管イベントの抑制には関連しないということが示された。正常で健康なヒトの心筋梗塞や心不全リスクの低減には繋がるかも知れないが、すでに疾患を抱えているヒトの心血管リスク回避にはならないと考えられる。(Medister 2012年7月27日)

AA,EPA,DHA―高度不飽和脂肪酸