閉経後女性の高血圧におけるアルドステロン拮抗薬の血管内皮への効果
女性と男性では心血管病変の進展に違いがあり、女性の場合、閉経期が一つの転機となり、血圧や脂質代謝が大きく変化することが知られている。
内皮機能障害は、高血圧の閉経後女性の心血管イベントに対する独立した予測因子として知られる。モデナ・レッジョエミリア大学(伊)のModena MG氏らは高血圧の閉経後女性の集団における薬物療法による内皮機能への影響を検証し、医学誌「J Renin Angiotensin Aldosterone Syst.」に報告(2011 Dec;12(4):446-55. Epub 2011 Jul 20.)した。
継続的な高血圧の症状のある閉経後女性320例において、ベースライン時と6ヵ月後の上腕動脈のFMD検査を実施した。6ヶ月後の検査において、80.3%の被験者において改善が認められた。多変量解析により、要因となる要素を検証したところ、アルドステロン受容体阻害剤の使用が内皮機能の改善と関連付けられた(オッズ比=2.15)。すなわち、FMD値が改善した群では、18.3%の被験者に対しアルドステロン受容体拮抗薬を投与していたのに対し、FMD値が改善しなかった群では3.2%に投与していたのみであった。
以上より、血管内皮機能は降圧療法の6ヶ月後に有意な改善として認められることが示唆された。アルドステロン受容体拮抗薬が効果的であることが示唆された。アルドステロンは、 腎、心臓、血管、脳などの組織でミネラルコルチコイド受容体に結合し、ナトリウム再吸収などの機序を介して血圧を上昇させる。ACEインヒビターやARB、カルシウムチャネルブロッカーなどではFMD値の改善、非改善群で差がなかったことからも、閉経期の血管内皮におけるアルドステロンのシグナル伝達経路の詳細な解析が待ち望まれる。(Medister 2011年12月22日)
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