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障害児の虐待に対するリスク

世界に93百万人いるという障害児は、健常児よりも虐待の被害者となるリスクが高いという。リバプール・ジョン・ムーア大学(英)のAlana Officer氏らは、問題の大きさを推定することにより、予防プログラムの開発に役立てたいと考え、系統的レビューとメタ分析を行い、医学誌「The Lancet」に報告(Volume 380, Issue 9845, Pages 899 – 907, 8 September 2012)した。

Alana Officer氏らは、18歳以下の障害児と健常児を比較するために、1990年から2010年に報告された12のデータベースにアクセスし、データを解析した。

総計10,663件の参照データから、17研究が選び解析したところ、虐待を受けた全体の障害児が26.7%、物理的な虐待を受けた障害児は20.4%、性的虐待を受けた障害児は13.7%であった。虐待全体を受けた障害児のオッズ比は3.68、物理的な虐待を受けた障害児のオッズ比は3.56、性的虐待を受けた障害児は2.88であった。

以上の系統的レビューの結果より、障害児は健常児よりも虐待の被害者になることが統計学的異質性としても示された。しかし今後の課題として、Alana Officer氏らは「しっかり設計された調査研究、障害と虐待の定量基準、虐待が障害の発生に対し先行するかどうかの不十分な評価などにより、確実な証拠が常に不足しており、対処するには十分でない。」と述べている。虐待は表面に出にくいため、確かなデータとして扱うことは難しいが、評価体系の確立が求められている。(Medister 2012年9月11日)

実践障害児教育 2012年 10月号 [雑誌]
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