難治性である膵臓癌への新たな動き
膵臓癌は統計上も膵臓癌の罹患率と死亡率がほぼ等しく、難治性癌といわれている。日本における膵臓癌患者数は、1980年頃までに欧米並みまで増加し、現在も緩やかに増加を続けている。
そんな中、膵臓癌治療に関する2つの動きがある。
まず既存薬に関する動きとして、これまで結腸・直腸癌が適応となっていたレボホリナートカルシウムが適応拡大となった。2013年5月にレボホリナートカルシウムを販売する4社(ヤクルト、第一三共、協和発酵キリン、ファイザー)がFOLFIRINOX療法に関する承認申請を行っていたが、これが承認されたというもの。FOLFIRINOX療法とは、オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウムの4剤併用療法であり、膵臓癌に対しては既に海外では使用されている治療法である。特に、米国・カナダおよび欧州では全身状態の良好な膵癌患者への標準療法として確立されているが、日本では保険適応にはなっていなかった。
次に国による動きとして、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の3省が連携し、がん研究を一元的に進める体制を来年度からスタートさせる。具体的には、まず厚生労働省が臨床試験などの治療法を開発する上での課題を整理する。その結果に基づき、文部科学省が新薬候補となる化学物質についての研究を進め、経済産業省が画像診断や放射線治療などに使う医療機器の開発や高性能化を進める。これらの成果を厚生労働省が臨床の現場に反映することで、その安全性や有効性の検証を行い、実際の診断・治療に使用できる体制とする。この動きは膵臓癌に限ったことではないが、最終的には日本版NIHに統合され、2020年頃までに10種類以上の新薬開発を目指す。
いずれにしても、現在の日本ではおよそ3万人が膵臓癌で死亡しており、年代別では高齢になるほど増加する。高齢化が進む日本では、今後も膵臓癌患者は増加すると予測される。膵臓癌は治療薬が少ない癌でもあり、今後の新薬開発に対し期待されている。
(Medister 2013年1月8日 葛西みゆき)
科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2013年版: 構造化抄録CD-ROM付