静脈血栓塞栓症を併発するがん患者の経験
静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症(主に下肢の深部静脈に血栓ができる病態)と肺血栓塞栓症(深部静脈に形成された血栓が肺動脈を塞ぎ、重篤な場合は死に至る疾患)といった一連の病態である。早期発見が困難であり、発症した場合、死亡率が高いことが知られている。悪性腫瘍患者でVTEを併発することがあり、古くは1865年にTrousseauらが悪性腫瘍の患者に静脈血栓症が多いことが報告されている。米国では平均11日間入院し、2万ドル以上の費用がかかるという報告もあり、医療経済上もがん患者のVTEのケアは重要な課題である。
マクギル大学ユダヤ人総合病院(カナダ・モントリオール)のGina Ciccotosto氏らは、過去数年以内にVTEの診断を受けたがん患者10名の調査をし、看護学術誌「Oncol Nurs Forum.」に報告(2012 May 1;39(3):E233-40.)した。
半構造化インタビュー(事前に基本的な質問事項を決めておき、回答者の答えによって詳細を質問する簡易な質的調査法)にデータを収集し、その結果、事前にVTEの知識を持たずにVTEを併発したがん患者は、より困難な静脈血栓塞栓症を経験したことを見出した。
Gina Ciccotosto氏らは、「がん治療の様々な段階でのVTE併発について、今後の研究が必要とされている。」と述べ、看護研究の研究テーマとして重要性を提議している。(Medisterニュース 2012年6月15日)