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骨髄性白血病の原因となる遺伝子の異常を特定 京大・東大グループ

 骨髄性白血病の原因となる遺伝子の異常を、京大・東大のグループが新たに突き止め、米国科学雑誌「Nature Genetics」(日本時間2013年8月19日(月)午前2時)電子版にて発表した。がんの診断や新しい治療薬の開発に繋がる成果であるという。

 急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などのいわゆる「骨髄性白血病」患者は、国内で年間1万人以上が発症している。治療法としては骨髄移植しかない。その原因としてはRNA合成に関係する遺伝子の異常であると考えられていた。

 今回の研究において、京大医学研究科の小川誠司教授および東大などのグループは、骨髄性白血病の患者610名のがん細胞遺伝子の網羅的解析を行った。その結果、細胞分裂時に染色体や遺伝子の働きを調整している「コヒーシン」を作る4つの遺伝子(STAG2、RAD21、SMC1A、SMC3)のいずれかが変異していることが分かった。その割合としては、急性骨髄性白血病で12.1%(157症例中19例)、骨髄異形成症候群で8.0%(224例中18例)、慢性骨髄単球性白血病の10.2%(88例中9例)、慢性骨髄性白血病の6.3%(64例中4例)などであり、全体としてはおよそ10%の患者で何らかの変異が認められた。
「コヒーシン」の変異がみられた白血病細胞では、(染色体内でのDNA蛋白複合体成分である)クロマチン上の「コヒーシン」結合部位の実質的な損失が見られるとともに、クロマチンに結合した「コヒーシン」コンポーネントの削減が見られた。しかし、野生型RAD21、または野生型RAD21とSTAG2を強制的に追加すると、RAD21の突然変異(Kasumi-1Cells)を有する・あるいはRAD21とSTAG2が重度に低減したMOLM-13細胞を有するタイプでは、白血病細胞の増殖を抑制することが確認された。これらの知見により、骨髄性白血病においては「コヒーシン」の変異がその発症に関与していることが示唆された。
 
 小川教授は、「コヒーシン」を作る遺伝子の変異は骨髄性白血病の悪性度を高めるだけではなく「他の癌でも同様の変異がある可能性がある」と話している。
(Medister 2013年8月26日 葛西みゆき)
白血病/骨髄異形成症候群 (インフォームドコンセントのための図説シリーズ)
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