骨髄間葉系幹細胞の免疫調整作用のメカニズム“FASを介したT細胞のアポトーシスの誘導”
骨髄間葉系幹細胞(BMMSCs)は、骨髄穿刺で容易に採取でき、培養技術も確立されている。血管,神経,心筋などを中心にした細胞移植治療だけでなく、免疫調整作用を活用した自己免疫疾患への治療応用が期待されている。一方で、未だ免疫調整作用の基本的なメカニズムは不明な点が多い。
南カリフォルニア大学(米国)のSongtao Shi氏らのグループは、BMMSCsが誘導する免疫調整作用は、FASならびにFASリガンドを介したT細胞のアポトーシス誘導を伴っていることがメカニズムの一端であることを見出した。この成果は、学術誌「Cell Stem Cell」4月26日号(筆頭著者は岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科秋山謙太郎助教)に掲載された。
Songtao Shi氏らは、FASリガンドの遺伝子欠損マウスのBMMSCsをfibrillin-1 に変異がある全身性硬化症のマウスに投与しても、T細胞のアポトーシスが誘導されず、デキストラン硫酸ナトリウムで誘導した大腸炎も改善されないことを示した。そのメカニズムとして、BMMSCs におけるmonocyte chemotactic protein 1 (MCP-1)の分泌が、FASリガンドを介したアポトーシスのためにT細胞を引き寄せるようだ。アポトーシス誘導されたT細胞は、TGFβを分泌するマクロファージを誘発させ、制御性T細胞を活性化し、最終的には免疫寛容になると述べている。
厚生労働省は国内でのヒト幹細胞の臨床研究に対して、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」などのガイドラインにより運用しており、BMMSCsを用いた医療は保険医療制度上にもまだ組み込まれていない治療法である。研究機関でのメカニズム解明、医療機関での治験、先進的なベンチャー企業による培養技術の開発とビジネスモデルの確立などが全て連携して、誰もが利用できる医療技術となることが待ち望まれる。(Medisterニュース2012/5/8)