高血圧症におけるtotal-C/HDL-C値とFMD値の関係性
動脈硬化は脳梗塞、心筋梗塞などの致死的な疾患リスクとなり、発生予防は先進国において医療経済学的にも重要な課題となっている。血管内皮障害は、アテローム性動脈硬化症の早期要因であるが、血管内皮機能に及ぼす心血管危険因子の影響は明確に理解されていない。今回、名古屋市立大学の木村玄次郎教授らのグループは、脂質プロフィールおよび障害に対する高血圧の影響を検討し、医学誌「J Clin Lipidol.」に報告(2011 Nov-Dec;5(6):460-6.)した。
日本人男性の外来患者の中で、グレードIもしくはII高血圧患者25例と、性別年齢が同じぐらいの正常血圧者を被験者として、血管内皮機能はFMD値により評価検討した。total-C/HDL-C値は、FMD値と負の相関をし、マロンジアルデヒド修飾低密度リポ蛋白質、高感度CRP値とFMD値は正の相関関係が認められた。段階的重回帰分析では、total-C/HDL-C値と収縮期血圧はFMD値の決定因子であることが判った。高血圧の被験者は、正常血圧被験者に対し低FMD値であり、脂質プロファイルは変わりがなかった。total-C/HDL-C値に応じて分けたグループでは、total-C/HDL-C値が高い層ほどFMD値が低かった。低いtotal-C/HDL-C値の高血圧被験者は高いtotal-C/HDL-C値の正常血圧者に類似した内皮インデックスを示した。ロジスティック回帰分析では、高血圧症でかつ高total-C/HDL-C値の被験者は、低FMD値と相関した。
以上より、内皮機能障害は、血管の酸化ストレスと炎症の結果としてtotal-C/HDL-C値の増加と相関したことが示された。木村玄次郎教授らのグループでは、循環器疾患の新しい病態診断法や、予後予測法の研究開発を推進しており、FMD値を活用した疾患診断や予測法の開発が期待される。(Medister 2011年12月20日)