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インフルエンザの予防接種プログラムの費用便益モデル

厚生労働省では、平成22年度のインフルエンザ予防接種の対象人口29,484,000人((1)65歳以上の者、及び、(2)60歳以上65歳未満の者であって、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるもの)に対し、実施人口15,638,292人と発表し、実施率は53.0%と発表した。
このインフルエンザワクチン接種は、米国でもインフルエンザによる経済的および人道主義的負担を減らすことができるが、予防接種率は推奨レベル以下であり、予防接種プログラムが社会にどの程度貢献しているか定かではない。ウォルグリーン株式会社(米)のKirkham HS氏らは、雇用主、従業員、社会の視点から様々な予防接種戦略の費用便益を比較し、学術誌「Cost Eff Resour Alloc.」に報告(2012 Jul 26;10(1):10)した。

モデルには、年齢別人口やリスクレベル、潜在的なパンデミックのリスク、予測年度別のカスタマイズが含まれた。様々な予防接種戦略は、平均的な2011年/2012年のシーズン中に薬局や診療所で予防接種を受ける15,000人に対するモデル化がされた。主要転帰指標は、様々なステークホルダーの観点から予防接種あたりの当期純コスト削減(PV)を報告した。

典型的な米国の母集団では、インフルエンザ予防接種プログラムにより、薬局のような非伝統的な環境で個人の37%以上がワクチン接種を受けると、雇用主にとって費用対効果が見込めるようだ。市民の50%が非伝統的な環境で予防接種される標準的なシナリオでは、$6PVが見込めた。薬局環境に限定したプログラム($31 PV)、高リスク合併症に限定したプログラム($83 PV)、高齢者に限定したプログラム($107 PV)では、更に費用対効果が見込めた。

以上よりKirkham HS氏らは、「普遍的かつターゲットを絞った予防接種プログラムはいずれも費用対効果が見込めた。コストモデルが確立された適切な予防接種の計画により、雇用主と政策立案者は予防接種プログラムの影響を改善するための戦略を開発できる。」と結論づけている。この検証からも、予防接種が必要な背景の枠組みを作り、予算を配分することが、国民医療費の高騰に悩む我が国の医療にも必要なことではなかろうか。(Medister 2012年7月31日)
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