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癌患者をもっと受け入れる社会に 学校教育における癌啓発が注目される

KIJ_kitakusuruhitotachi500-thumb-750x500-1349厚生労働省が2014年2月に、全国の企業411社を対象に治療と仕事の両立に関するアンケート調査を行ったところ、何らかの支援を行っているのはわずか41社だった。企業側の声として「癌は私的なことであり企業としては支援しにくい」「どのような支援をすれば良いのかが分からない」という回答が多かった。
厚生労働省の資料によれば、癌患者のうち3人に1人は就労可能年齢(20歳~64歳)で罹患している。その数はおよそ33万人。一方で、被雇用者のおよそ35%は退職あるいは解雇を余儀なくされている。社員が癌になった時、企業側はどうすれば良いのか、未だ模範となるような事例は非常に少ない。全国にある13の拠点病院の中にハローワークを設置し、就業支援を行う動きもあるが、ここを通じて再就職できた患者はおよそ30%程度にとどまっているという。

そんな中、子どものうちから癌についての理解を深める「がん教育」が注目されている。文部科学省は2014年度、北海道、神奈川県、川崎市、神戸市などを含む全国21の地方自治体をモデル地区に指定し、「がんの教育総合支援事業」を開始した。癌や癌患者に対する正しい理解と、癌予防や早期発見につながる行動変容を促すのが目的だ。また、これとは別に今年10月には、京都市内の小学校で特別事業が行われた。生徒だけではなく癌経験者の保護者も参加した。治療する側からの講義と、かつて治療を受けた側との体験談を元にした授業を終え「がんは怖いけれど身近な病気」という認識を持つことが出来た子どももいたという。

いずれ、小学生の頃から癌教育を受けた子どもたちが企業を支える側になった時、「癌は誰でもなり得る病気」「早期発見して治療すれば働ける」という意識がどこまで浸透しているのか。癌患者にとって働きやすい企業が増え、癌患者を受け入れやすい社会が構築されているのだろうか。これからの子どもたち、それを支える社会に期待したい。
(Medister 2014年11月20日 葛西みゆき)

実践 がんサバイバーシップ―患者の人生を共に考えるがん医療をめざして
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