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黒色腫に対する経口治療薬、新たにDabrafenibがEUでも承認

GSKは2013年9月2日、Tafinlar(Dabrafenib)が、EUでも承認されたと発表した。この製剤はBRAF-V600 変異型の切除不能あるいは転移性の黒色腫治療に用いられるもので、2013年5月にすでに米国で承認されている。投与可能な患者の条件として「BRAF-V600突然変異が確認された場合」に限られており、この変異を持たない癌の場合、癌細胞の成長を促進してしまう可能性があるため投与の対象とはならない。

黒色腫とは、メラノサイト(メラニン色素を産生する皮膚細胞)または母斑細胞(ほくろの細胞)が何らかの原因により悪性化した腫瘍と考えられている。単に黒色腫またはメラノーマと呼ばれることもある。皮膚がんの中でも黒色腫は死亡率がおよそ75%であり、重大な皮膚がんの1つである。そのうちおよそ半数程度にBRAF遺伝子突然変異があるとされる。
BRAFたんぱくは、“RAS-RAF経路(正常細胞の増殖と生存に関与する)”の重要な構成要素であるが、突然変異によりBRAF遺伝子が活性化された状態が続くと、この経路のシグナル伝達が過剰となり、いずれ(がん細胞を含む)細胞の増殖が制御不能となることが知られている。今回承認されたDabrafenibは、変異が確認されたBRAFたんぱくを選択的に阻害する、経口キナーゼ阻害剤である。

 Dabrafenibに関する第3相試験(BREAK-3)では、Dabrafenibが既存薬であるdacarbazine(悪性黒色腫、ホジキン病などの治療薬としてすでに日本でも使用されている)と比較して、疾患の進行または死亡リスクを70%軽減できたという結果になった。また、dacarbazineの無増悪期間(中央値2.7ヶ月)に対し、Dabrafenibは5.1ヶ月であった。さらに2012年6月からの解析では、Dabrafenibは、既存薬dacarbazineと比較して、疾患の進行または死亡リスクを63%低減でき、さらに無増悪期間の比較ではdacarbazineの2.7ヶ月に対し6.9か月であったといわれている。

 同等の効果を持つBRAF阻害剤として、2011年にロシュのZelboraf(vemurafenib)がすでに承認を受けており(2011年、日本では中外製薬が導入締結済)、こちらもBRAF-V600E変異型の切除不能または転移性の黒色腫に用いられる。米国での販売価格はZelborafよりも安価に価格設定されているそうだ。
(Medister 2013年9月17日 葛西みゆき)

日本人の悪性黒色腫
日本人の悪性黒色腫