2型糖尿病における血圧低下のための運動はFMD、内皮機能関連バイオマーカーに影響しない
糖尿病では10年血管の老化が早まると言われ、自覚症状のないまま年月が経つと合併症が末期まで進展しているということもしばしばある。糖尿病患者の約半数は高血圧の症状があり、危険因子の一つである。糖尿病は生活習慣病であり、運動を生活に取り入れリスクを回避するために取り入れることがある。
ジョンズホプキンス大学とピッツバーグ大学のClark JM氏らのグループは、2型糖尿病におけるFMDと内皮のバイオマーカーによる運動介入の効果を検討し、医学誌「Atherosclerosis」のオンライン版に報告(2012 Aug 2)した。
2型糖尿病で、治療前、高血圧ステージ1、治療中でデスクワークをしている40歳から65歳の被験者140例について、6ヶ月間、運動プラグラム(3×週)の無作為化試験を行った。BMI、体脂肪量、内臓脂肪量、血圧、脂質、HbA1c、インスリン感受性(QUICKI)、 酸素摂取量、FMD、E-セレクチン、P-セレクチン、細胞外・血管細胞接着分子(ICAM、VCAM)、tPAを測定した。
運動群では、コントロール群に対しBMI (-0.6 kg/m2)、体脂肪率 (-1.4%)、 HbA1c (-0.5%)、酸素摂取量(2.9 mL/kg min)が改善された。しかし、FMD値、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、VCAM、tPAには、運動群とコントロール群で変化は見られなかった。P-セレクチンの減少は、BMIの減少とHDLコレステロールの増加に相関があった。ICAMの減少は、トリグリセリドとHbA1cの減少、QUICKIの増加と相関した。tPAの減少は、総脂肪、内蔵脂肪の減少と、QUICKIの増加と相関した。
以上よりClark JM氏らは、「血圧低下のための運動により酸素摂取量、体組成、血糖コントロールの改善が見られるが、FMD、内皮機能のバイオマーカーに影響しない。」と結論付けた。(Medister 2012年8月27日)
糖尿病の治療マニュアル