2016年のがん統計予測公開
国立研究開発法人 国立がん研究センター(略称:国がん)がん対策情報センターは、本年2016年に新たにがんと診断される数を示す罹患数と死亡数のがん統計予測を算出し、がん情報の総合サイト「がん情報サービス」にて公開した。
日本のがん統計は、罹患データは4~5年、死亡データは1~2年遅れて公表されているという。一方で諸外国では、これらの遅れを数学的な手法で補正して、現時点でのがん統計を予測する試み(短期予測)が実施されている。昨年9月2014年のがん死亡数が公表され(厚生労働省人口動態統計)、本年7月に2012年のがん罹患数全国推計値が公表された(国立がん研究センターがん対策情報センター)。これらの最新データを用いて、国がんでは2016年のがん罹患数および死亡数を予測した。
2016年のがん統計予測では、がん罹患数予測は101万200例(男性57万6千100例、女性43万4千100例)で、 2015年の予測(98万2千100例)と比較すると、男女計で約2万8千例増加している。また、部位別では、大腸、胃、肺、前立腺、乳房(女性)の順にがん罹患数が多くなっている(大腸、胃、肺はほぼ同数)。順位を2015年のがん統計予測[大腸、肺、胃、前立腺、女性(乳房)]と比較すると、上位5位のがんに変化はなかった。
一方、2016年のがん死亡数予測は、37万4千人(男性22万300人、女性15万3千700人)となっており、2015年の予測と比較すると、約3千人の増加がみられている。部位別にみると、肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順にがん死亡数が多くなっており、2015年の予測(肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順)から順位の変化はなかった。
国や地域の確実ながん対策のためには、過去の実績と将来予測の両方のデータを見る必要があり国立がん研究センターでは2014年の予測より算出し公開しているという。短期予測を活用することで、がん対策の目標設定、評価を行うことに役立つであろう。また予測値はこれまでの傾向が続いた場合を前提に算出するため、後に公開される当該年の実測値と突き合わせることにより、がん対策でどれだけの罹患、死亡を減らせたかの評価、分析を行うことも可能となるはずである。
(Medister 2016年7月19日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 2016年のがん統計予測公開 罹患数予測約101万例、死亡数予測約37万人