ICU患者の睡眠へのカノコソウ指圧療法の効果
重症患者はしばしば睡眠に問題が生じる。指圧療法やカノコソウアロマセラピーは睡眠を促進するのに役立つと報告されている。カノコソウはヨーロッパ原産の植物で、古代ギリシャ時代から神経の高ぶりを押さえ、深い眠りを誘導するハーブとして愛用されてきた。日本でも江戸時代の植物学者飯沼慾斎(いいぬまよくさい)が、「草木図説・1856年」に記載しており、根と球根は吉草根(きっそうこん)という生薬として知られ、日本薬局方に収録されている。
マッカイ医科大学(台湾)のYann-Fen Chao氏らは、集中治療室(ICU)の患者の睡眠に対し、カノコソウ指圧療法が効果を発揮するかを検証し、医学誌「International Journal of Nursing Studies」に報告(Volume 49, Issue 8 , Pages 913-920, August 2012)した。
42床の集中治療室に運ばれた成人の患者に対し、無作為化臨床試験を行った。アクティグラフィーで午後10時から午前6時に観察し、スタンフォード眠気尺度(SSS)で翌朝測定した。コントロール群は標準的な治療を受け、対象群は2日目の午後7時から10時の間、Shenmen(神問:耳)、Neiguan(内関:手首)、Yongquan(湧泉:足裏)ツボにカノコソウ指圧療法を施した。心拍数については、弛緩反応を測定する心拍変動解析のため、カノコソウ指圧療法の前後に5分間測定した。その結果、カノコソウ指圧療法を受けた患者は、睡眠時間の増加、覚醒頻度の低下、SSSの成績の低下が示された。また、心拍変動もカノコソウ指圧療法後に弛緩反応を示した。
以上よりYann-Fen Chao氏らは、「Shenmen、Neiguan、Yongquanツボへのカノコソウ指圧療法により、ICU患者の睡眠時間と品質を向上できることが示された。」と述べている。代替医療により治療の質を高める試みは、西洋医学との組み合わせという観点を加え、患者満足度を高める上で今後更に研究されていくだろう。(Medister 2012年8月3日)