肺癌におけるMAGEA4の発現と、喫煙、HLAの発現の関係性
肺癌は最も致死的ながんの一つであり、非小細胞肺癌(NSCLC)が全体の約80%を占めると言われる。メラノーマ関連抗原A4(MAGE-A4)は先天性角化異常症の原因遺伝子とも考えられているが、がんの臨床においては免疫療法の標的の候補の一つとして考えられ、NSCLCで発現している。しかし、腫瘍はヒト白血球抗原クラスI(HLA)の発現が喪失するときがあり、腫瘍特異的T細胞はHLAがなければ腫瘍を排除できない。一方で、MAGE-A4発現とHLA喪失との関係は不明であった。
産業医科大学の田中文啓教授らのグループは、187例のNSCLC患者を検討し、医学誌「Int J Clin Oncol.」のオンライン版に報告した(2012 Nov 3.)。77例の腫瘍はHLAを発現しており、110例の腫瘍は、HLAの発現が消失していた。HLA喪失患者で喫煙習慣を持ち、MAGE-A4遺伝子を発現した患者の割合は、HLAが発現している喫煙習慣のある患者と比べ高かった。 MAGE-A4を発現しておりHLAを喪失している患者の5年全生存率(OS)は52.4%であり、HLAを発現している患者のOSは74.0%であり、HLA喪失群は有意に予後不良であった。
以上より田中文啓教授らは、「NSCLCにおけるHLAの喪失は喫煙歴と腫瘍のMAGE-A4発現に関連した。喫煙歴のある患者もしくはMAGE-A4遺伝子を発現する患者のHLA喪失はNSCLCの予後因子であった。」と述べている。HLAの発現により、自然免疫により生存率が高まると考えられ、免疫療法による治療の選択肢も拡がってこよう。(Medsiter 2012年11月9日)
肺癌内科診療マニュアル―EBMと静岡がんセンターの臨床から
posted at 2012.11.12
静岡県立静岡がんセンター呼吸器グループ,山本 信之,宿谷 威仁,三浦 理
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