NCIが大腸癌の再発予防策を探るべく、新臨床試験(PACES)を開始
米国における大腸がんの発症率は第3位であり、また癌関連の死亡原因としても第3位となっている。日本の統計でも、死亡率は男性では第3位、女性では第1位となっている。大腸癌は死亡リスクが高く、一度大腸癌と診断されると、何らかの治療を受けてもさらに新たな大腸がんを再発することも多い。
そんな(初回治療後の)大腸癌の再発予防法を検討するべく、NCI(米国国立癌研究所)は、SWOG(NCI’s National Clinical Trials Networkである5つの臨床試験協力団体の1つ)やCancer Prevention Pharmaceuticals, Incと共同でPACES(The Preventing Adenomas of the Colon with Eflornithine & Sulindac)試験を開始すると、NCIニュース(2013年7月25日版)にて発表した。
PACES試験は、過去に大腸癌の治療を行った患者にエフロルニチンとスリンダクのどちらかまたは両剤を定期的に投与することで、新たな大腸癌や大腸腺腫(大腸壁に発生するポリープの1種で前癌状態の場合がある)の発生リスクを減少させる可能性について検討するものである。この2つの薬剤は、体内のポリアミン値(自然に形成される分子で、大腸癌の発生に関わっている)を低下させる作用がある。また両剤は異なる機序で作用しており、エフロルニチンはポリアミンの産生を遅らせ、一方のスリンダクは過剰なポリアミンを排除する効果がある。
PACE試験の対象としてこの2剤が選ばれた理由は、前回行われた臨床試験において、大腸癌における初回治療後の予防効果が認められたためである。前回の臨床試験では、両剤の併用群と対照となる非服用群とに分け、新たな大腸腺腫の発生を比較した。その結果、試験後3年間における併用群の腺腫発生率は非服用群の3分の1以下に抑えられただけではなく、高リスクの腺腫または複数の腺腫が発生する可能性を90%低下させるという結果が得られたためだ。この試験は「大腸癌治療後の再発予防の研究に加えて、治療後の再発リスクが最大である患者を特定する上で助けとなる、新しいゲノム技術を用いる重要な試験である」といわれており、大腸癌治療の新しい道筋を示すのではないかと期待されている。
(Medister 2013年9月3日 葛西みゆき)