PM2.5が肺癌発症のリスクに WHOが因果関係を認める
2013年10月17日、世界保健機構(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、大気汚染の原因となる粒子状物質(PM2.5)と肺癌発症リスクとの因果関係を認めたと発表した。IARCは過去数十年以上にわたり、1,000を超える学術論文や欧米各国ならびにアジアにおける疫学調査の結果などを分析し、PM2.5と肺癌発症との間に因果関係があると結論付けたのだ。IARCのモノグラフ・プログラム(専門科学者からなるワーキンググループ)は、これまでもディーゼルエンジン排気ガスによる癌の誘発を指摘したことはあったが、特定の物質を含む大気汚染が、人に対する発癌性を認める“グループ1”に分類され、肺癌の原因と成り得るとしたのは、今回が初めてであるという。会見の中では「2010年には世界の肺癌による22万人を超える死者はこれらの大気汚染に関連している」とし、またPM2.5は膀胱癌増加の要因となっているとも伝えている。さらに「大気汚染が呼吸器疾患および心疾患などに影響を与えることはすでに明確であり、近年、世界のいくつかの地域で多くの人口を持つ工業国において著しく増加している」と明言し、「これらの国では今後数年間、PM2.5などによる大気汚染にさらされるリスクが非常に高い」と警告している。
近年、中国の急激な経済発展等に伴い、北京を中心としたPM2.5などによる大規模な大気汚染が問題となっている。中国ではこれまでも大気汚染が問題となったことはあるが、平成25年1月の大規模な大気汚染では、健康被害の他、高速道路の閉鎖・航空便欠航など、多方面で大きな支障を来した。さらにこれが日本にまで飛来し、九州地方や西日本で一時的にPM2.5 の濃度が上昇したことは記憶に新しい。
日本で安全とされる環境基準は、PM2.5の日平均が35μm/g3以下。これが70を超える、あるいは1時間値で85μm/g3以上の場合は、屋外での作業を控えるよう都道府県が住民に対して注意喚起する、というのが日本における指針だ。
日本では冬季から春季にかけて変動が大きいといわれるPM2.5。日本でも環境省のサイトで、都道府県ごとの速報値が確認できる。今後は自己防衛策も必要となるであろう。
(Medister 2013年10月21日 葛西みゆき)
ここまでわかったPM2.5本当の恐怖―謎の物質を科学する