SCROM-Japanに武田薬品が参画 新規抗癌剤の創薬へ1歩前進
2015年5月8日、国立がん研究センター(東京都中央区、以下「国がん」)と、武田薬品工業株式会社(大阪市中央区、以下「武田薬品」)は、研究開発提携に関する契約を締結したと公表した。これは、国がんが主体となり2015年3月からスタートしている、産学連携全国がんケノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan」に、武田薬品も参画するというもの。
国がんでは、日本の優れた画期的な抗がん剤を創出し、いち早く患者さんやそのご家族に届ける、という目標を掲げ、SCRUM-Japanをスタートさせた。SCRUM-Japanは、全国の参画医療機関と、製薬企業とが連携して行うがん遺伝子異常スクリーニング事業である。医療機関からは、がん患者の診療によって得た遺伝子情報と診療情報が、データベースへ登録される。製薬企業はそのデータベースにアクセスし、国がんと協力しながら新たな医薬品の研究開発を加速させるという試みだ。
現在対象となっているのは、肺がん、消化器がん(大腸、胃、食道、小腸、虫垂、肛門管、消化管原発神経内分泌がん)であり、当面の目標は、年間で肺がんと消化器がんの各1,000例を含む4,500例を集約したいとしている。
2015年3月5日現在での参画医療機関は、全国で192か所。大学病や県立がんセンターなどがメインであるが、各都道府県で1医療機関以上が、すでに参画していることになる。今回、武田薬品が参画したことで、参画企業は以下の11社となった。
アステラス製薬株式会社、アストラゼネカ株式会社、Amgen Inc.※、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、協和発酵キキリン株式会社、第一三共株式会社、大鵬薬品工業株式会社、武田薬品株式会社、中外製薬株式会社、ファイザー株式会社(五十音順)
この契約締結を受け、武田薬品のOncology Therapeutic Area Unit HeadであるMichael Vasconcelles氏は、「国立がん研究センターの臨床研究における知見と、当社の保有する技術基盤を融合させることで、より早く、革新的な治療を患者様と医療関係者の皆様にお届けできるものと期待している」と述べている。
※Amgen Inc.:アメリカに本社を置く、世界最大のバイオテクノロジー企業
(Medister 2015年5月12日 葛西みゆき)
<参考資料>
国立がん研究センター 国立がん研究センターと武田薬品との研究開発に関する提携について
同上 産学連携全国がんゲノムスクリーニング 「SCRUM-Japan」始動
NOC EPOC 先端医療開発センター LC-SCRUM-Japan 参加施設
同上 産学連携全国がんゲノムスクリーニング (SCRUM-Japan)の概要
がんの予防―科学的根拠にもとづいて (国立がん研究センターのがんの本)