医療安全の5Sを実践するための点滴スタンド 「トップⅣスタンド タイプN」
医療安全の5Sを実践するための点滴スタンド
「トップⅣスタンド タイプN」
写真左:田母神 孝 先生 CM部臨床工学科室長 臨床工学技士
写真中央:須田 喜代美 先生 医療の質管理部 医療安全管理室 課長
写真右:輿石 直樹 先生 副院長 兼 外科科長
はじめに
島県会津若松市で897床、1,400名以上のスタッフを擁する竹田綜合病院。会津医療圏での地域医療の中核となる病院である。新病院建設計画は2004年にスタートし、その際に「あたたかい心とたしかな医療」を基本理念に掲げ、平成25年のグランドオープンに向け更なる計画が進行中である。平成24年10月には、総合医療センターが新設されオープンした。省エネルギー、省CO2に配慮し、太陽光発電、風力発電、太陽光追尾採光装置など導入。また免震構造を取り入れ環境にやさしく災害に強い病院を目指している。今回は、竹田綜合病院の副院長である興石直樹先生、臨床工学科室長の田母神孝先生、医療の質管理部の須田喜代美先生らに、理念を実現するためにどのようなことを行っているか、これまでの経緯や状況を伺った。
竹田綜合病院の特徴や強みなどについてお聞かせいただけますか。
田母神先生
当院は、二次救急医療機関として救急医療を行い、会津医療圏の総救急搬送件数に対する救急搬送の割合も市内医療機関の約35%に対し、年間約5,000件(50%弱)の救急の受け入れを実施しています。会津医療圏では、唯一の三次小児医療機関として、小児患者の24時間受け入れを実施しております。また総合医療センターでは、地域周産期母子医療センターとして、NICU 6床、GCU 12床を有し、ハイリスク母体、新生児搬送受け入れなども24時間体制で実施しています。災害医療に関しては、災害拠点病院(会津中央病院)と県立病院の後方支援を実施しています。リハビリテーション医療として、急性期~慢性期そして在宅支援まで切れ目のないリハビリテーション提供体制をとっています。そして、へき地医療機関(県立宮下病院や県立南会津病院)との診療連携、遠隔画像診断による連携を地域医療支援病院として行なっています。
外部の医療機関とも情報交換など積極的に行なっております。VHJ研究会(全国で28病院)や病院経営比較検討会(11病院)において全国の病院との情報交換や病院見学など行い、良い情報は当院でも採用しています。VHJでは、医療機器の情報や、安全情報を共有しております。私自身は3ヶ月ごとに東京で開催されるME定例部会に参加し、様々な医療機器の情報共有をさせてもらっています。
医療安全全国共同行動に参加されているとお聞きしましたが、どんな活動をされているのですか。
須田先生
医療安全全国共同行動は、有害事象の低減と医療事故の防止を目指し、全国多数の病院も参加しているキャンペーン事業です。共同行動は、全部で9つの目標があるのですが、私達は「行動目標2 周術期肺塞栓症の予防」、「行動目標3(a) 危険手技の安全な実施(経鼻栄養チューブの安全な挿入)」、「行動目標8 患者市民の医療参加(特に患者さんに名前を名乗ってもらう)」、「行動目標S 安全な手術‐WHO指針の実践」に参加しています。特に共同行動の初年度(2008年)に注力したのが「経鼻栄養チューブの安全な挿入」です。当院で、気管への誤挿入の事故があったので、その時に良い方法がないかと探っていたところ、共同行動に出会い、やるなら徹底的にやろうと考えて、すぐに院長に承認をとり、共同行動に参加しました。当初は3項目で始めましたが、昨年から新たに加わった「安全な手術」についても参加しています。活動としては、医療の質・安全学会での発表、共同行動のフォーラムでの発表、京都・滋賀の研究会への参加に加え、県内でも医療安全の勉強会を今年から始めました。
それまで、輸液スタンドのキャスターが溝に引っかかることで転倒事故につながるヒヤリ・ハットや輸液ポンプの整理がうまくいかないことによる取り違えなど、ヒューマンエラーを引き起こす可能性のあるいくつかの問題もありました。そのため、機器の操作方法はもちろん、使用前、使用中、使用後のそれぞれの機器の管理や点検方法などについて、共同行動で推進しているマニュアルのフローチャートそのままだと、院内のシステムに合わせて使えないものが多かったため、当院で活用しやすいよう、先生方も巻き込んで院内で大きく改変しました。現場で安全に医療を実施できるようにと「写真を入れたマニュアル作り」を行っています
そして、作ったものに関しては説明会で解説し、改訂も定期的に行なっています。今年は、肺塞栓防止の竹田綜合病院バージョンのマニュアルも完成予定です。私達のマニュアルは、共同行動に参加している他の病院でも活用していただいているようです。このような活動を始めてから当院では誤挿入などの事故もなくなり、実際に成果として現れています。次は、「NICUの小さい子供用のマニュアル」を支援チームの一員として作ろうと動いております。
「医療安全の5S」に取り組んでいると聞いたのですが、どういったことをされているのでしょうか。
田母神先生
医療安全の「5S」とは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つです。物の5Sから始まり、現在業務の5S、安全の5Sと続いています。具体的には、在庫の置き場が常に同じ場所で同じ個数があること、物(機器)を取り出しやすい状態にすることにより、結果看護部などでは患者さんの急変時の処置スピードにも良い影響がでます。安全管理においては、探す手間を減らせるようにと考えて実践しております。
須田先生
5Sは10年ほど取り組みを行っておりますが、安全とコラボして実践するようになったのは、この2、3年です。私達は、「目で見る管理」に力を入れています。どこに行っても同じものが同じ場所にあるという形にしたいと考えています。実際に点検の仕方などすべて統一しています。ものの置き場所については、2年前に「輸液セット」と「輸血セット」を間違って使ってしまったことがありました。よく見れば判りますが、見た目が似ていたということもあり、ヒューマンエラーが起こり得るので、別の場所に保管するようにしてから、間違いが起こらなくなりました。
ところで、医療安全というと怖いイメージが多いのですが、昨年は院内で自分のところで工夫しているアイデアを募集したりと、楽しい取り組みを心掛けて行いました。川柳を募集したり、ポスターを作成したり、それらの取り組みに対して表彰して、賞品を出したり、医療安全を楽しく伝えました
今年度は、患者さんに渡す用の転倒転落防止パンフレットを作ろうというプロジェクトも立ち上がっています。
輸液スタンドについて「トップIVスタンド タイプN」を導入されたとお聞きしましたが、導入のきっかけはなんだったのでしょうか。
田母神先生
今回、総合医療センターを新設するにあたり、5Sの観点からも点滴スタンドについて、「トップIVスタンド タイプN」
を現在までで合計439台導入しました。それまで、ポンプ用点滴スタンドをうまく整理できないということが問題としてありました。また、ゴミや髪の毛がキャスターに挟まり、結果的にキャスターが回らなくなって「キーッキーッ」と音がしたり、色落ちが目立つ、などの課題がありました。トップさんに相談したところ、「トップIVスタンド タイプN」により改善することが判り、試しにまず2、3台を導入してみました。総合医療センターを新設することになって、フロアごとに色分けしようという話になりました。しかし、その時点で「トップIVスタンド タイプN」は4色しかなく、フロア数に対して色が足りないということで、全10色に対応してもらったのが、今回の導入の経緯です。フロアごとや、外来用というように色分けして、用途により分けることができるので、今ではどこのフロアのものか色で全てわかります。
「トップIVスタンド タイプN」について、「安全性」、「操作性」については、いかがでしょうか。
田母神先生
軽いし、車いすで移動するときにも足が邪魔にならないです。バランスがよく、キャスターも大きく、音も静かになり、フックが選べることが本当に良いです。収納スペースは圧倒的に違います。重ねて収納できるので、10台が5、6台ぐらいのスペースで置けるようになり、もちろん見た目も綺麗です
須田先生
看護師の現場でも好印象です。以前のスタンドは4本足で、エレベーターの溝に引っかかり患者さんが転倒したことがありましたが、IVスタンドは6本足でキャスターが大きくなり、引っ掛かりがなくなったため、転倒の危険は大きく減りました。形状も患者さんが歩きやすいよう工夫されていて、点滴スタンドに足がぶつからなくなりました。ストレッチャーと一緒に点滴スタンドを移動する時にも、スムーズに移動ができます。
患者さんからも使いやすくなったという話を聞いています。ただ動きがスムーズになったことで、転倒の原因にもなることを考え、患者さんには杖替わりではないのだということを伝えるようにしています。
「トップIVスタンド タイプN」のカラーバリエーションにより、整理整頓でき、患者さんにとっても安全になります。認知症の患者さんは、対策をとっていても違うフロアに行ったり、外に行こうとしたりしますが、色でわかるので安心です。
5Sの清掃の項目で、車いす、スタンド、ベッドなどゴミが溜まるところもキレイに掃除をする担当者が居りますが、そういう方にも掃除がしやすく、看護師達も手入れがしやすいと良い評価です。導入して、非常に良かったです。
更に使いやすくするために、今後どんな工夫が必要だとt思いますか。
田母神先生
現在、オペ室では2台程度しか使用しておりません。「トップIVスタンド タイプN」を更に使いやすくするために、高い位置に輸液バッグをつるして使用することを想定して、ポールの長さがもう一段階長いものを選べるようにしてもらうと、オペ室にもさらに導入できるのではないかと考えています。
「トップIVスタンド タイプN」はこの3年間でほとんど壊れること無く、他社に比べ耐久性が高いことに加え、パーツごとに購入(交換)できるので、ランニングコストの低減に寄与する為、VHJ等にも紹介していけます。
カラーバリエーションは10色にまで増やしていただきましたが、更に4、5色増えると更に使い分けができるのでよいです。
輿石先生
海外はおしゃれなデザインの医療機器が多いのに、日本は色なども無機的です。そういった「物」のアイデアを出し合っていきたいです。おじいちゃんおばあちゃんも最近はおしゃれだから、選べないと辛くなってくるでしょう。
「病人だから我慢する」時代ではなくなるのではないでしょうか。色変えの提案などは、外国から入ってくることが多いです。外国の物の方がおしゃれだからです。機能は最優先ですが、今後はカラーやデザインというのも考えていく方向になるでしょう。
Profile
輿石 直樹 先生 副院長 兼 外科科長
平成02年03月 山梨医科大学医学部医学科卒業
平成11年09月 竹田綜合病院外科医員に入局
平成11年09月 竹田綜合病院外科医員に入局
田母神 孝 先生 CM部臨床工学科室長
昭和59年03月 福島県立会津工業高等学校機会科卒
昭和59年04月 竹田綜合病院用度課医療器械係り入社
平成15年04月 CM部臨床工学科室長に就任
須田 喜代美 先生 医療の質管理部 医療安全管理室 課長
昭和60年03月 竹田看護専門学校卒業
昭和60年04月 (財)竹田綜合病院(内科病棟配属)
昭和63年04月 日本看護協会 看護研修学校 研修学科(内地留学)
平成元年03月 同校卒業
平成20年02月~現在 医療の質管理部 医療安全管理室 課長 専従医療安全管理者