発展途上国支援としてのコミュニティデザイン@フィリピン・マニラ 第三回「炭焼き人移住プロジェクト」
第三回「炭焼き人移住プロジェクト」
プロジェクトの第一の目的は、炭焼き職人たちが安全で安定した生活を送れるようにすること。それには住まいを整え、効率がよく炭が焼ける無煙窯を建設し、生産性を上げて収入を向上させることが必須です。
「プロジェクト始動に先立って、ボックマンは元々あった炭焼き業者のネットワーク「炭焼き業者互助組織」とミーティングを重ね、主要メンバーとともに移住先候補や無煙窯を導入した実績のある地域へ調査旅行に出かけました。そして彼らによって新たな組合組織への移行が決議されたため、組合設立に向けた研修プログラムの開発指導を始めました」。
ボックマンさんは頻繁に現地に足を運び、現地の人々とコミュニケーションをとっています。写真はボックマンさんと炭焼き職人の代表者たち、現地NGOのソーシャルワーカー。
場所選びの条件として重要な点は、水害のない土地で、無煙窯による炭の生産を行なうことのできる場所が第一に挙げられます。今回移住場所として決定したブラカン地方にあるボカウェ市は、マニラから北に24キロほど離れた場所にあり、人口は10万人ほど。農業地帯ながらハイウェイでマニラ市に直結しており、近隣にも中規模都市が点在しています。病院や教育施設もあり、経済成長が見込めるといわれている都市です。
「他にも行政の提案する土地がありましたが、どれもスモーキーマウンテンに近いものの水害の可能性があり、ブラカンが最良であるという決断がなされました。彼らの住まう住宅は現地の住宅局が手配し、すでに建設も終えています。人々は20年ローンでこの住宅を買い取る仕組みです。かなり安普請ではありますが、インフラも整えられた各世帯38㎡の個別住宅は現況10㎡で暮らす彼らにとってはとても魅力的で、支払いが終われば自分たちのものになる、財産ともいえるのです。しかし、その家に住まうには、毎月400円から600円程度のローンを20年払い続けるための資力が必要です。今は毎日一家で働いて3ドルから4ドルの収入ですが、これはほとんど食費へと消えていきます。これ以上の収入を得ていくことが、とても大事です」。
ボカウェ市はマニラ市の北に位置する農村地帯。
問題点は、ブラカンへの移住に伴い、スモーキーマウンテンのように簡単に廃材が手に入らなくなること。そこでお二人はさらに現地調査を進め、近隣の農民たちがさとうきびや稲わら、ココナッツの殻の処理に困っていることを知ります。また点在する池に大量発生し水路を詰まらせ、洪水を引き起こしていたという蓮や、森林に影響をもたらす藪も、焼けば良質な炭になり、また水害の緩和や環境保全に一役買える、という可能性を導き出したのです。
フィリピン製の無煙窯。
藁で炭を作るためのドラム缶モデル。
上記の窯と比べて低温のため藁が灰になりません。
「今までとは違う方法…、無煙窯で焼いた炭を更に価値の上がる練炭に生成し、また煙から高価な木酢を収集することで、収入を向上させる予定です。もちろん従来の窯より遥かに効率も上がるわけですが、そうすると必要な人手も1/10から1/5ほどになります。余った労働力と、炭焼き職人以外の250世帯の生業をどうすればよいかという問題は、大きな課題です。これは、作った練炭や木酢の販売のためのパッケージングや営業活動、運送などに配備転換し新たな収益を獲得すること、またサリサリの経営やダンプの運転手、大工など、元々の経営者や技術者とも協力しながら、生産者・労働者協同組合を作ることで解決すると考えています。
加えてフィリピンでは協同組合で複数の目的を持つことが許されているため、金融協同組合の機能も持たせ、低利で借りられる金融とすれば、この融資を利用して、サリサリを開業したり、トラックなどを共同で購入して地域でビジネスを展開する人々が出てくることも十分考えられますし、また卸し業者として機能する消費者組合を置くことで、地域のビジネスはより活性化すると予測できるのです」。
炭の需要が大きいフィリピンでは、
よく燃える練炭は価値の高い製品となります。
地域の皆で稼いだお金が外に流れず、コミュニティ内で循環する環境づくりこそが、お二人の考える「継続可能な支援」。協同組合の形も見え、人々は同じ方向を向き、あとは実施するのみとなりました。次回、最終回へと続きます。
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カマルフリーダでは、炭焼き職人移住プロジェクトに際し、支援を募っています。
例えば、プロジェクトの要となる無煙窯は全部で15-20基建設する必要があり、
一基25万円もの費用がかかります。
また、用地となる400㎡の土地を買収するのに約100万円、
できた無煙窯を覆う屋根の設置には約500万円、
組合事務所の建設には、簡単なもので900万円程度の資金が必要となります。
これらの建設にご興味・ご協力をいただける方がおられましたら、
ぜひカマルフリーダまでご連絡をお願いいたします。
ご参画頂きましたおそれぞれの「モノ」にはお名前や会社名を掲載させていただきます。
またその写真を撮影しパネルにしてお送りしたり、カマルフリーダでもご紹介させていただきます。
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