発展途上国支援としてのコミュニティデザイン@フィリピン・マニラ 第一回「スモーキーマウンテンで暮らす人々」
第一回「スモーキーマウンテンで暮らす人々」
現在、世界最高の人工密度ともいわれるフィリピン・マニラ市。中でも最も人口が密集している地帯とされるのが「トンド地区」や「ウリアン地区」といった、市の各所にみられるスラム地域です。
フィリピンでは歴史的に一部の大地主たちに土地が集中している状況が続いているので土地が極端に高く、マニラの35パーセントもの人々は不法占拠者になっ てスラムに住まざるをえません。なかでも「スモーキーマウンテン」と呼ばれる巨大なゴミ捨て場で廃品回収をして生活をする人々の悲惨さは類をみないといい ます。ごみが自然発火していつも有害な煙をだしているのでそのように呼ばれており、タクシーの運転手たちは行くことを嫌がるほど。
ボックマンさんと西村さんご夫妻がその現状を目の当たりにしたのは、別の支援活動でフィリピンを訪れたとき。現地の展示会で空き缶のプルタブを使った美しいバッグを見かけ、その製造元を訪問したのが始まりでした。
まさに「ゴミの山」。
子どもたちもここで暮らしています。
「プルタブバッグは現地のNGOの支援を受け技術を身につけた女性達が、ひとつずつ手作りで制作していました。その場所というのが、スモーキーマウンテン のあるトンド地区。スモーキーマウンテンという名の通り、塵や炭焼きの煙が充満するゴミ山の傍で大勢の人が暮らしていました。
そこにいる人々はいわゆる「不法占拠者」なので常に立ち退きを迫られる危険にさらされています。働かないと飢えてしまうので皆必死に働いていますが、ほと んどが自営業です。廃品回収をする人々、拾い集めた廃材で炭を焼き生計を立てる人々、サリサリと呼ばれているミニストアを経営する人などその日暮らしでも 懸命に生きている人たちばかりでした」。
ゴミの回収は早い者勝ち。子どもたちは危険を承知で
廃品回収車に飛び乗り、リサイクル資源を探します。
今にも崩れそうな住まいが並ぶ風景は壮絶です。
廃材やダンボールで出来た簡易的な家に、あたり一面はゴミの山。加えて周囲には炭焼き人が焼く炭の煙が充満し、目も開けていられない…。壮絶な環境を目の当たりにし憤りを覚えたお二人は、何か有効な支援ができないか、想いをめぐらせることになります。
「ここでは生計を立てるため、子どもも一緒に働く家庭が多数でした。そんな中、教育支援に現地のNGOによって、コンテナを積み重ねた学校舎で親がプルタブバッグ製作などの仕事をし、その子どもは無償で教育が受けられるような取り組みがなされていました。
そこでまず私たちは、プルタブバッグなどその場所で作られる製品をフェアトレードとして、日本で販売することにしました。製品の収益は母親の報酬だけでなく学校の運営にも使われることとなり、より多くの子どもたちに満足のいく教育を与えられるようになります」。
校舎の3階で働く女性たち。
窓の外には人々が暮らす家が川沿いにひしめいています。
勉強に集中できる環境で元気いっぱいの子どもたち。
福祉や医療も充分に受けられ、生き生きと過ごしています。
* * *
フェアトレードによって現地の子どもたちの教育支援を少しずつ形にしていったお二人。次に注目したのは、同じくスモーキーマウンテンの傍のウリアン地区で働く炭焼き職人たちでした。
ゴミ山から優良な廃材を探し出し、炭を作る炭焼き職人たち。
煙に囲まれながらの作業による、重度の健康被害に悩まされています。
「ゴミ山からリサイクル素材を探し出す作業は大きな危険を伴います。生活の糧を得ることは命がけの作業でもあるのです。でもスラムの人々が廃材を拾い集め るお蔭で、高価な施設がなくてもリサイクルが実現している、つまり彼らが携わるリサイクル業はマニラの経済に大きく貢献しているといえます。
しかし、収入が少ないため劣悪な住環境から抜け出せず、また消費においてもまとめ買いができないため高い料金価格で買い物せざるを得なかったり、教育費や 医療費など大きなお金が必要な際も銀行が相手にしてくれないため、手数料の高い金貸しに頼るほかないというのが現状です。
こうした悪循環を諦めるのではなく、安定した生業を持ち組織化が行なわれることによって現状を打破する人々が現れれば…その地区全体の人々に上昇志向が生 まれ、生活改善に取り組み始めるのではないだろうか。それにはまず成功例を作って、それを範例として悪循環を抜け出せる方策を見せることが有効だと、そう 考えました。
おりしも2012年8月の大洪水によって死者や建物倒壊による大規模な被害を受けたウリアンの人々は、住宅局が提案した移住先のひとつ、ブラカン地方の農 村に移住しそこで炭焼きができないかと考えはじめていました。そこで私たちは彼らに無煙窯で炭焼きができる土地を提供し、窯をたて、生産者協同組合をつ くって生活を立て直すことを発案しました。
もしも移住先で炭焼きが出来なければ結局スモーキーマウンテンにもどってきて原始的な窯で炭を焼き有害な煙で健康被害に見舞われてしまいます。スモーキー マウンテンに戻らないこと、ブラカン地方に定住して炭焼きができる環境をつくり持続的なサポートをすることが私たちの目的です」。
次回は、お二人が取り組む炭焼き人への支援プロジェクトについて、お話をお伺いします。(続)
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NPO法人カマルフリーダ ウェブサイト
カマルフリーダでは、炭焼き職人移住プロジェクトに際し、支援を募っています。
例えば、プロジェクトの要となる無煙窯は全部で15-20基建設する必要があり、
一基25万円もの費用がかかります。
また、用地となる400㎡の土地を買収するのに約100万円、
できた無煙窯を覆う屋根の設置には約500万円、
組合事務所の建設には、簡単なもので900万円程度の資金が必要となります。
これらの建設にご興味・ご協力をいただける方がおられましたら、
ぜひカマルフリーダまでご連絡をお願いいたします。
ご参画頂きましたおそれぞれの「モノ」にはお名前や会社名を掲載させていただきます。
またその写真を撮影しパネルにしてお送りしたり、カマルフリーダでもご紹介させていただきます。
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