<ドクターエディ・ラボ> 出版バイアスによる研究発表への影響(4)研究発表への影響と解決策
アカデミック・コミュニケーションの教授、Dr. Eddyが医学論文のジャーナル投稿に関するイロハをやさしく解説するドクターエディ・ラボ。シリーズ3では出版バイアスによる研究発表への影響について説明します。
シリーズ3では、出版バイアスの問題点や原因、その対処法を重点的に説明してきました。シリーズ最終回の本記事では、なぜ出版バイアスを打破すべきなのか、そしてバイアスがもたらす研究発表への影響、その解決策について解説します。
(1)なぜバイアスを打破すべきか?
これまでバイアスの問題点をみてきましたが、出版バイアスは研究の本来の目的を覆します。そして、ポジティブな結果の公表を重視することで、バイアスは偏った文献をつくり上げ、医学や科学領域の研究において、“高潔さを妥協した結果”をもたらしてきました。
特に医療業界においては、この結果が効果のない、危険な治療につながり、患者の苦痛を助長したり、資源を無駄にしたりといったような不利益な結果を招いています。
(2)研究発表への影響
では出版バイアスによる研究発表への影響について具体的にみていきましょう。代表的な出版バイアスがもたらす影響の例には2種類あります。まず1つ目は、「文献に関する出版バイアスの影響」です。これには3つの影響があります。
- ポジティブな研究結果が出版済み文献を支配する可能性がある
- ネガティブな結果の出版の方が少ないため、新しい治療法や、社会政策、新しい装置の有効性が過剰評価され、それらのリスクや欠点が過小評価されることがある
- ある治療の危険性を発見した研究が発表されない可能性がある
続いて、2つ目は「公衆衛生に関する出版バイアスの影響」です。具体的な事例を2つみていきましょう。
- 1980年、抗不整脈薬クラスⅠを処方された心臓病患者の致死率の上昇を発見した研究者らは、その結果を偶然の発見とみなして公表しなかった。後に、事実上これらの薬剤が死亡率上昇を招いたことがわかった1993年、研究者たちは、「この非公表は“出版バイアス”の良い例である」と認めた。つまり彼らは13年前に彼らの研究結果を報告していれば、命を守れたことが認めたのである
- 携帯電話の使用による健康への有害な影響に関する実験的な研究に関する調査は、産業業界出資の研究がポジティブな結果を報告するおそれが著しく高いことを明らかにした
この事例をみてもわかるように、出版バイアスによる影響によって、時には人命に関わることもあるのです。私たちはこのことに対してより一層危機感を持ち、またバイアスをなくすための解決方法を見つけ出す必要があります。
(3)出版バイアスをなくすための解決策
では、この問題をなくすために、どのような解決方法があるのでしょうか?
- ネガティブとポジティブ両方の結果を公表する必要性を強調すること
- 査読を偏見抜きで客観的に行うこと
- 出資者による研究方法、成果の報告、出版の決定への影響を拒否すること
上記3つの対策を実行することで、出版バイアスを打破することができるでしょう。また、期待された結果を生み出すような研究ではなく、方法論的に信用のある研究を投稿し、文献の高潔さを維持することに貢献していくことが今後の課題と言えるでしょう。
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