<ドクターエディ・ラボ>ジャーナルが論文をリジェクトする理由とその対策について(4)カバーレターの重要性
本シリーズではジャーナルが論文をリジェクトする理由について述べてきました。本記事ではそれを避けるための効果的な方法の1つとして、優れたカバーレターを作るポイントを説明したいと思います。
優れたカバーレターを作るコツ
ジャーナル編集者のもとに送られてきた論文がリジェクトなしで、次のステップに進めるかどうかは、カバーレターにかかっているといえます。たいていのジャーナルでは、投稿論文ごとにカバーレターを添えて提出するよう求められています。残念ながら、その実際の影響力に気づいていない著者が少なくありません。カバーレターは、ジャーナルの編集者とコミュニケーションを取り、投稿論文に関心を持ってもらう、非常に良い機会です。
編集者のもとへは何百本もの投稿論文が殺到しているため、第一印象が良いことが重要です。Nature Immunology [1] の編集者によると、カバーレターは、「著者と編集者が対話を始めるきっかけ」であり、「編集者の興味を引くのに一役買っている」といるようです。そのため、論文のタイトル、ジャーナル名、責任著者の連絡先のような基本的な情報だけを慌てて書いた、短いカバーレターでは、スルーされてしまします。そこで、カバーレターに書くべき重要事項を以下にあげたいと思います。
1.論文のタイトルと責任著者の連絡先:まずこの基本は忘れないようにしましょう。
2.研究知見の要約:研究で一番重要な結果を、わずか3、4文で要約しなければなりません。ここでは専門的な詳細は避けたほうがよいとされています。現在発表されている文献の中に自分の論文を位置づけることを目的とすべきであります。研究が強みにたどり着くためには、次の質問に自答してみましょう。
-いかにして自分の研究は現在の知識を拡充しているか?
-この分野において重要とされる論文の結果に対し、自分の論文は異議を唱えているか、それとも賛辞を呈しているのか?
-この研究の新しい所は何か?
-この研究は、将来の研究に対し、注目すべき示唆を与えているか?
3.投稿の動機:短い要約のあと、当該ジャーナルに対する自分の研究の適合性について一文加えましょう。
-ジャーナルが扱う範囲とどのくらい合致しているだろうか?
-読み手はなぜ興味を持つと思われるか?
4.倫理委員会からの承認: 倫理的な問題が生じた時のために、カバーレターでは施設内審査委員会によって研究が承認されたかどうか言及しなければなりません。臨床治験の場合は、インフォームドコンセントが取られていることも述べ、登録・承認番号も記載すること(これを特別に要求するジャーナルもある)。
5.利益相反:利益相反の可能性があるかどうか簡単に述べること。
6.オリジナリティと著者同意: 最後に、論文が他のジャーナルでの発表を検討されておらず、一部あるいは全部を発表済みでもないことを明記すること。また、すべての著者が論文に目を通しており、当該ジャーナルへの投稿に同意していることも明記しましょう。
優れたカバーレターはジャーナル編集者に印象づける第一歩のチャンスであり、ジャーナルのリジェクトを防ぐことに一役買ってくれます。
以上、今回のシリーズでは、ジャーナルが論文をリジェクトする理由と、そしてそれを防ぐための対策としてカバーレターの重要性について説明しました。論文投稿の際には是非ご参考にしてください。
参考文献
[1]. Nature Immunology 9, 107 (2008) doi:10.1038/ni0208-107
過去記事
<ドクターエディ・ラボ>ジャーナルが論文をリジェクトする理由とその対策について(1)リジェクトの一般的な理由(前半)
<ドクターエディ・ラボ>ジャーナルが論文をリジェクトする理由とその対策について(2)リジェクトの一般的な理由(後半)
<ドクターエディ・ラボ>ジャーナルが論文をリジェクトする理由とその対策について(3)原稿の質に関係ないリジェクト理由
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