メディスターレポート

医院の借入 3つの鉄則 vol.1


 
鉄則1.借入を管理する

 

まずは借入金の種類と特徴を知ることから

・手形借入金とは

金融機関へ手形を振出し、短期返済条件で資金調達する借入金です。手形の書替により長期化できるケースが多いですが、自社の財務状況が悪化した場合、手形が強制執行されることもあります。

 
・当座貸越とは

当座預金を一定額までマイナス残にすることにより、資金調達する借入金です。預金など担保提供が必要で、金利高のデメリットがあります。

 
・証書借入とは

金融機関に担保や保証を提供し、長期返済条件で資金調達する借入金です。通常、借入に際して代表者の連帯保証や不動産担保、信用保証協会の保証が必要です。

 

医院の借入管理のポイント

医院の借入管理のポイントは設備資金借入を重点管理することと、運転資金借入を減らすことです。借入を管理する資料として借入分析表の作成が有効です。

 

借入分析表に記載する項目

金融機関の借入口ごとに 次の項目を毎月更新するのがポイントです。

  • 借入金の種類(証書借入、手形借入、当座貸越など)
  • 設備資金借入か運転資金借入かの区分
  • 設備資金借入の場合 投資対象の資産内容、耐用年数
  • 当初の借入金額
  • 現在の借入残高
  • 毎月の返済額
  • 借入利率(保証料率含む)
  • 借入返済期間
  • 担保、保証の内容(不動産担保の場合 不動産時価)

 

リースの場合、次の項目を毎月更新します。

  • リース資産の内容
  • リース料総額
  • 現在のリース残債額
  • 毎月のリース料
  • リース料率
  • リース期間

 

設備資金借入を重点管理する理由

院長の仕事は患者視点・職員視点・財務視点のバランスを考えながら、医療サービスを向上させることです。

ここでの医療サービスとは人的サービスと設備サービスをいいます。

つまり、院長は財務視点で資金繰りを悪くしないように、長期借入・自己資本により設備資金を調達した上で、患者視点で設備を更新して、医療サービスを向上させることを求められます。

長期にわたり収益に貢献する設備の資金を 長期返済資金で充当することが設備資金借入を管理する理由となります。

 

設備資金借入を重点管理するポイント

「設備投資の運用益と借入金額の関係」「借入期間と固定資産の耐用年数の関係」を把握することが、重点管理の意味になります。

設備投資の運用益が初期投資額(借入金額)を超える時期が早いほど、回収効率の高い投資といえます。

借入期間が固定資産の耐用年数より短いほど、借入期間中は資金繰りが圧迫されるが、借入期間終了後の運用益はキャッシュ増となります。

借入期間が固定資産の耐用年数に近いほど利益とキャッシュのズレが少なく、資金繰りの影響が少なくなります。

 

運転資金借入を減らす理由

医療経営においては、保険請求債権が2ケ月後に確実に入金し、医薬品在庫が分業により縮小しているため、運転資金の必要性が低いです。

その外部環境の中、運転資金借入が減らない医院は、収益構造や資金管理に問題があります。

 

運転資金借入を減らすために

運転資金借入を減らすのは月次決算と予算の精度を上げることが有効です。

月次決算と予算の精度を上げる項目として季節変動に合わせた売上予測、賞与・退職給与・減価償却費の見込計上、要員管理に基づく資格者別の人件費予測、納税予測、過大な臨時損失が生じない損害保険加入などがあります。

 
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吉田正一税理士事務所 税理士 吉田正一
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