経鼻胃管チューブ・PEGから注入できる半固形化栄養法の検討 ~とろみ調整食品を用いて~
2.臨床での有用性の検討
人工胃液での結果をもとに、実際の臨床現場での効果を検討した。本検討は、大学倫理委員会の承認を受け、全事例に同意を得て実施した。
研究方法
(1)対象
経管栄養中に下痢(症候性下痢症を除く)、GERDを合併した17例
(下痢11例、GERD4例、下痢+GERD2例)
(2)検討事項
1)下痢の有無(目視での観察および後方視的にカルテ記録から評価)
2)GERDの有無(食前と食後の咽頭内容物を吸引し、尿糖テストテープ法を用いて糖反応で評価)
3)アルブミン値の変動
(3)除外基準
・胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプインヒビター:PPI)を服用中で胃酸分泌が少ないと予測される患者
※PPIを胃粘膜保護剤に変更した場合は実施可能とする。
・胃酸の分泌が少ない患者(胃切除術後など)
・チューブの先端が十二指腸のトライツ靱帯を超えた位置に留置されている患者
(4)必要物品(図4)
(5)注入方法
NGチューブの場合
・8Frと10Fr:50mLカテーテルチップで手押し注入
・12Fr以上:注入容器からの自然滴下注入
PEGの場合
・注入容器からの自然滴下および手押し注入
注入手順(ハイネ®の場合)
準備:
リクライニング位30°以上にし、チューブの先端が胃内に挿入されていることを確認する。また、先に投与された経腸栄養剤が胃内に残留していないかも確認をする。
STEP1:
ハイネ®200mL+水50mLに対し、ネオハイトロミールⅢ®1包2.5g(1.0%)を添加し、30回撹拌する(図5)。
※攪拌しながら添加するとダマができにくく、均等に混ざりあう。
STEP2:
ただちにカテーテルチップで約5~10分以内に注入する。残りの半量も同様に行う(図6)。
※注入に力を要する時は、30mLカテーテルチップなどに変更すると注入しやすくなる。
STEP3:
チューブの閉塞予防のため白湯を20mL注入し、30~45°のリクライニング位で20~30分間安静にする。
結果
(1)下痢の有無について(図7、8)
下痢13例中12例は、とろみ調整食品を用いた半固形化法導入後に下痢が消失した。下痢が治まらなかった1例については、精査にて病原性大腸菌が検出された。なお、下痢が消失するまでの期間は、1日で消失したのが6名、ついで2,3日であった。
(2)GERDの有無について(図9)
今回、検討した6例とも、半固形化導入後に糖反応が(-)となった。
(3)アルブミン値の変動について(図10)
定期的にアルブミン値の測定を行なっていた15事例を後方視的にカルテより検討した。1事例のみ開始時に比べ終了時に低下するといった結果になったが、この事例は病原性大腸菌が検出され下痢が治まらなかった事例であった。
考察
経口からの食事摂取が困難になった場合、体外から直接チューブを介して流動食を投与する経管栄養法が用いられる。経管栄養法は、腸管機能が正常で、経口からの摂取が困難な場合に適応となる。経管栄養法の合併症としては、GERDや下痢、嘔吐などが挙げられる1)。そこで近年では、これらの合併症を予防、改善する目的で、半固形化栄養法が注目されている。半固形化栄養法が合併症を予防する理由としては、経腸栄養剤の形状を液体から半固形にすることによって、生理的な消化管運動を誘発するためと考えられている2)。実際にGERDや下痢、嘔吐が改善したとする報告も多数ある4-9)。そして、GERDや下痢、嘔吐以外にも、半固形化栄養法を行うことによって得られるメリットはいくつかあり、これらはADL・QOLの向上にもつながるとされている3)。
このように、様々な利点がある半固形化栄養法ではあるが、細い径のNGチューブを用いた報告はほとんどない。その理由として、GERDを予防できる粘度として報告されている20,000mPa・sの半固形化栄養剤を、細いNGチューブから注入するには困難なためである。そこで、細いNGチューブからでも注入できる半固形化栄養法について検討を行った10-11)。
本検討では、経腸栄養剤としてハイネ®(株式会社大塚製薬工場)を、とろみ調整食品としてネオハイトロミールⅢ®(株式会社フードケア)を用い、とろみ調整食品を1.0%添加したものを試料として用いた。
胃の環境下で半固形状になっていれば、GERDおよび下痢は防げるのではないかと考え、pH1.2の人工胃液に上記試料を8Fr・NGチューブで注入する検証を行った。人工胃液に浮遊する半固形状のものを篩でろ過し、篩の上の残渣の物性を測定した結果、とろみ調整食品1.0%以上で20,000mPa・s以上の粘度が得られた。これは、経腸栄養剤に含まれるタンパク質が、低pH下でタンパク凝固を示した結果と、とろみ調整食品に含まれる増粘多糖類(キサンタンガム)による水分の増粘により得られたものと推測される。なお、とろみ調整食品の添加濃度は、注入の際に手にかかる負荷を考えると1.0%程度で十分と考える。
次に、PPIなどの制酸剤を服用している症例では、胃酸の分泌が少なく24時間平均胃内pHが4~6で推移しているため12-14)、pH6.0の人工胃液内で粘度上昇が得られるか検討を行った。これは、腸瘻栄養法や胃全摘を行い、胃酸の分泌の影響が得られない症例も想定した。結果、pH1.2の人工胃液内で行った時のような半固形状のものは見られず、液状だったため、篩を通り抜けてしまった。よって、胃酸の分泌が少ない若しくは無い症例については、除外するまたは慎重に進める必要があるものと考えられた。
ここまでの検証は、経腸栄養剤としてハイネ®のみを用いてきたが、他の経腸栄養剤(半消化態栄養剤)についても同様の結果が得られるか検証したところ、経腸栄養剤の種類によって20,000mPa・sに達しない場合があることが分かった。原因ははっきりとは断定できないが、経腸栄養剤に含まれるタンパク質の種類が影響している可能性が高く、比較的タンパク源としてカゼインや大豆タンパクの配合が高いものの方が胃酸との反応が良い傾向があった。一方、タンパク源として乳清の割合が高いものは酸との反応が低い傾向が示された。乳清は、ヨーグルトの上澄み液でよく説明されるが、酸では凝固しないタンパク質として知られるため、おおよそ説明がつく。また、窒素源が、アミノ酸オリゴペプチドの消化態栄養剤やアミノ酸の成分栄養剤は、タンパク凝固反応は起こらないため、胃内では増粘しないと推測される。よって、消化態栄養剤および成分栄養剤に本法を用いても半固形化栄養法の効果は期待できない。
これらの人工胃液内での結果をもとに、実際の臨床現場での効果を検討した。対象は、経管栄養中にGERD、下痢(症候性下痢症を除く)を合併した症例としたが、後に病原性大腸菌が検出された1例を除いては、改善に向かい、大きな問題なく実施できた。また、栄養状態の改善もみられた。ただし、実施件数が少ないのが現状である。よって、とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法の適応については、医師の指導下で慎重な判断のもと検討していただきたい。
結論
経腸栄養剤にとろみ調整食品1.0%を添加する半固形化栄養法は、径の細いNGチューブを用いて注入することができ、胃内環境下でGERDを予防するとされる20,000mPa・s以上の粘度が得られることが分かった。また、十数例ではあるが、GERDおよび下痢の改善が見られ、半固形化栄養法としての効果が期待された。
次頁へ続く





